「森友問題」NHK「クローズアップ現代」(2025/04/22放送)で分かったこと(前半)-要旨の整理と情報の初出判定(2025/05/05)

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2025年4月22日(火)、NHK総合「クローズアップ現代」(午後7時30分-午後7時58分)で、森友問題をテーマにした内容が放送された。

徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が
初回放送日:2025年4月22日

NHK (Japan Broadcasting Corporation)、「クローズアップ現代」、”同上”。徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が – クローズアップ現代 – NHK。「初回放送日:2025年4月22日」。(見逃し配信NHKプラスでの参照2025-04-26)

この件で、開示請求を行っているご遺族と関係者の方に、最大限の感謝を申し上げるとともに、この問題にかかわって亡くなられた方々には、改めてご冥福をお祈りいたします。

そしてまた、新たな情報を提供してくれる報道機関に、最大限の敬意を表します。

今回のNHK「クローズアップ現代」は、先日公開された文書を報じるだけでなく、内容を精査し、関係者に更なる取材を重ね、新たな証言・証拠を発掘しており、調査報道として価値のあるものだった。

ただ、登場人物が多岐にわたり、複数の時系列を把握する必要がある森友問題。

30分という番組では、初心者には難しかったりする一方、詳しい者にとっては物足りなかったりするところがあるのは否めない。

そこで今回は、放送された内容を整理するとともに、これまでの分かっている情報の復習を兼ねて、新たに「分かったこと」と、「分からなかったこと」を確認したい。

当初は1記事にまとめる予定だったが、書いていくうちにあれもこれもと内容が膨らみ、1記事では収まりそうになく、全部を書き終えるうちに、ゴールデンウィークが明けて次の公開情報が出てしまうのではないかと焦ってきたので、まずは、前編として、放送の要旨を(個人的に)まとめ、放送された内容の内、新情報であるかどうかの(個人的)判定をしたものを紹介したい。
後編は、「クローズアップ現代」が報じなかったことからの復習と予習を試みる(次記事)。

[公開:2025/05/05 更新:2025/05/07]

当ブログ記事は、

NHK (Japan Broadcasting Corporation)、「クローズアップ現代」、”徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が”。初回放送日:2025年4月22日(NHK総合午後7時30分-午後7時58分)(同上)

をテレビ放送で視聴した内容を参照し、また、見逃し配信サイト「NHKプラス」(登録が必要)で同番組の配信[配信期限 :4/29(火) 午後7:58 まで]を(視聴可能な期限の間、)再視聴して参照したものを反映しています。(見逃し配信NHKプラスでの参照2025-04-26)

テレビで放映・再配信された内容を元に個人的に書き起こしている箇所もあるため、実際の音声や番組字幕と異なっていたり、一部不正確な内容があるかもしれませんが、ご了承ください。

また、今回、新たに公開されて報道されている一連の開示された森友文書については、全文が公開されている場所を個人的に(ネット上で)見つけられなかったので、当ブログの内容は、報道されている情報のみから反映されていることもお断りしておきます。

1.「クローズアップ現代」(2025/04/22放送)の内容の要旨

徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が
初回放送日:2025年4月22日
森友学園の国有地取り引きを巡り、財務省と近畿財務局が決裁文書の改ざんを繰り返すなどした“森友問題”。大阪高裁の判決を受け、今月、財務省は関連文書の一部を開示した。学園が取得を要望し国有地を借り受けた後、8億円余り値引きされて売却されるまでの交渉記録など2200ページだ。なぜ値引きが実現したのか?異例の対応が財務省主導で進んだ実態が浮かび上がってきた。さらに、当事者が初めて打ち明けた値引きの経緯とは

NHK (Japan Broadcasting Corporation)、「クローズアップ現代」、”同上”。徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が – クローズアップ現代 – NHK。「初回放送日:2025年4月22日」。(参照2025-04-26)

要旨

  • 改ざんを関与させられたことを苦にして赤木さんが自殺、その妻が関連する文書の開示を求め、判決を受けて財務省は今月(2025年4月)4日2255ページを開示
  • 赤木雅子さん「3年半ぐらい裁判戦ってきた」
  • 開示されたのは2013年6月~2016年6月の内部文書
  • 2013年6月学園からの問い合わせ 2016年6月国有地売却
  • 今回はじめて近財と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容が明らかに
  • 学園 貸付を要望
  • 近畿財務局2014年3月24日電話 否定的な考え
  • 近財→本省「(学園側は)適当な資料」「お断りするという整理はできないでしょうか」
  • 4/15近財→学園「貸付の契約はできない」
  • 6月対応が一変 財務本省にも相談した結果「ご協力するという結論」
  • 本省が取引を主導していた
  • 2014/12/08 近財小池管財部長→本省理財局国有財産業務課橋本課長 架電
    「近畿財務局としては断る考えであったものを無碍に断るのではなく定期借地の活用を検討したらどうかとの本省の示唆に共感し種々検討を重ね今日に至っているものである」
  • 本省→近財「本省理財局から行かれた総務部長、管財部長がおられるのだから厳しく指導しているものと思っていた」
  • 2015/05 貸付契約 貸付期間 原則3年を大幅に超える10年 特例的な対応
  • 元職員 喜多徹信さん「なんでこんなことを東京の本省から指示があるんだ こういうことで非常に異例」
  • 弁護団 阪口徳雄弁護士「こういう文書があらかじめ最初に出てきたらこれはもう本省だ ということを明らかにして国会でも追及されたでしょうし、情報公開でもそれに沿ってそのことを被疑者にできたのに」
  • 財務省本省はなぜ異例の取引を主導したのか
  • 2014/04/15貸付を断られた その後籠池氏が「神風が吹いた」と表現した出来事 4/28「3S写真」を渡した 改ざんされた決裁文書にも記されていた
  • しかし今回開示された文書には、この4月28日の記録がなかった
  • 1番から380番までの通し番号がほぼ時系列でふられている
  • 75個の番号が欠落
  • 46~49は連続して抜け落ちていた 2014年4月18日の文書(45)~5月13日の文書(50)の間
  • 連続してない部分には共通点 いずれも政治と接点があった時期と一致
  • 46-49 2014年4月28日昭恵氏との3S写真近畿財務局に見せる
  • 168-171 2015年2月17日鳩山邦夫元総務相の秘書近畿財務局を訪問
  • 303-305 2015年11月10・12日昭恵氏付きの職員財務省と電話
  • 財務省「検察に提出した資料から意図的に隠していることはない 欠落しているとのご指摘を受けているものについては現在確認を行っている」
  • 三木由希子理事長(情報公開クリアリングハウス)「そもそも政治家側から働きかけを受けた際の文書を検察に提出していなかったのではないか」
  • 2015年5月貸付 2016年6月8億円値引きで売却
  • 2016年4月4日近畿財務局作成「棟上げ式までの工程に与える影響を最小限に」
  • 4月11日 本省→近財メール 「損賠請求!」「泥沼の法廷闘争」
  • 2016年3月くい打ち工事で地中からゴミ 対応 交渉に
  • 今回取材に応じた建設会社 藤原工業の社員(2人)
    「なんかややこしい話になっていくんかなって」
    「なんか、雰囲気的になんていうんですかね緊張感があるというか怒っているような感じもあったので」
  • ただならぬ空気を感じた社員たちは交渉の一部を記録していた 4日間約8時間
  • 3月14日
    籠池「棟上げの時は、あの、内閣総理大臣夫人が来られて 棟上げでお餅をまかれることになっている 日にちを今調整中やねん ここでまたずかーんとずれてしまうんや」
    国側「今でいつごろを予定していますか」
    籠池諄子「いつごろって6月てわかるやんか 前にもゆうたやん」
    訴訟を口に対応を迫っていた
  • そもそも3mほどの深さまでコンクリート片や生活ゴミがあることは分かっていた
  • 建設に支障となるゴミは1億3200万円で国が撤去済み
  • 小さなゴミがくい打ち工事で出てきたことを問題視 貸付ではなく国有地を値引きして売却するように求める
  • 当初は慎重な姿勢を見せていた近畿財務局
  • 交渉開始から1か月後、本省が作成し今回初めて開示された文書
  • 2016年4月理財局国有財産審理室 森友学園への対応について(大阪航空局処分依頼事案)
    「隠れた瑕疵」 3m下から出たごみで国が賠償責任を負う
  • 2016年3月25日森友学園と藤原工業などの打ち合わせ
    籠池「そっち掘ってもらったけど出てきたような形にせなあかん ちょっとはそのためには一致協力団結してほしいねん 頼みますわ(ドン、机をたたく音か?) ほんまにたのむ(ドン、同)」
  • 3月30日
    近畿財務局「その下にあるゴミっていうのは国が知らなかった事実なのでそこはきっちりやる必要があるでしょうっていう そういうストーリーはイメージしているんです それで」
    藤原工業「そのストーリー・・・」
    近畿財務局「すいません だから、3m以下からゴミが噴出しているとか、写真とかもし残っていたらね掘ってる中の3m下から」
    藤原工業「ちょっと待ってください そこは語弊がありますので「3m下から出て来たかどうかは分からないです」っていうふうにお伝えしたんです」
    近畿財務局「言い方としては混在と 9mまでの範囲で」
    藤原工業「9mっていうのはちょっとわからないですけど そこまで下か」
    森友学園顧問弁護士「だからねそこはね 言葉遊びかもしれないですけども 9mのところまでガラが入っている可能性を否定できますかって言われたら 否定できないでしょ できないんです そういう話です」
  • 翌月ゴミの深さ校舎9.9m 校庭3.8m 撤去費用を約8億1900万円と算出
  • 2016年6月鑑定価格9億5600万円 1億3400万円で売却
  • 2017年2月23日衆議院予算委員会
    佐川理財局長「現場の専門的な工事関係者と議論をして まさに3mより深いところからゴミが出たということを確認した上でどういう方向で処理しようかと議論したということ」
  • (取材者)「国の説明は正しい っていうふうに思われますか?」
    藤原工業社員「思わないです わたしらは全部すべての深さからゴミが出てきましたと言うような内容は伝えてませんので、そういうとこはちょっとわたしらが伝えた内容とはちょっと違う内容になっているのかと思います」
  • 藤原工業 建設費など約16億円負債
  • 藤原工業藤原浩一社長「ウソにウソを重ねてまたウソを重ねてという積み重ねですよね そこの中でウソをつくためにうちらは利用されてきた ほんとに残念で仕方がないですよね」
  • 国の説明と食い違い
  • 8年前の国会 太田理財局長「会話の一部が切り取られたものだ」
  • 公表されていない長時間の音声 藤原工業の証言を裏付けるもの
  • 財務省「工事業者のコメントについては承知していません ギリギリの対応」
  • 会計検査院の検査や検察の捜査でも明らかになっていない
  • 本省が主導していたことが明らかになったが、値引きの経緯、政治の影響 明らかになっていない
  • 6月に”決裁文書の改ざん”文書6000ページ開示→最終的に17万ページ分開示
  • 赤木雅子さん「本当に毎晩 お布団の上で「誰か助けて、誰か助けて」って言いながら二人で泣いていた」

以上、敬称略(一部)。
放送された内容からの個人による書き起こしのため、省略しているところと、個人的に補足してあるところがあり、一部正確な再現ではない可能性があることをお断りしておきます。

2.放送内容についての評価

今回の「クローズアップ現代」では、30分番組の中で、前半は先日先行して開示された文書について、後半は土地取引の経緯について取り上げていた。

開示された文書の内容をただ報じるだけではなく、欠けている部分に注目して整理してまとめてるなどしており、また、後半では当時の工事事業者への取材をし、これまで未公開だった(と思われる)新たな証拠・証言を発掘しており、30分番組として質の高い内容だったと評価できるだろう。

上記の要旨と繰り返しになるが、放送の(より簡単な)映像内容は、

放送では、冒頭で、自殺した元職員の妻による訴訟により文書が開示された経緯を紹介したあと、開示された文書から初めて明らかになった近畿財務局と財務省本省のやり取りを取り上げ、本省が取引を主導していた、と明言。

当初、(学園側が要望していた)貸付に否定的だった近畿財務局の対応が一変したことについて、開示された文書から、本省が取引が主導していたことを明らかにし、取材による元職員の証言や弁護団の弁護士によるコメント。

開示された文書で連番が欠けていることについて、文書を1枚ずつ時系列順に一面に並べ、欠けている番号を視覚化した上で、連続して欠けている部分に、政治と接点があった時期と重なることをわかりやすく表示。欠けていることについて財務省のコメントも取り、その内容について識者コメントによる説明。

続いて、貸付から売却に変わった経緯について、建設会社の社員による顔出しの証言と、社員が記録していた音声データ(4日間約8時間)の(一部)公開。

値引き理由となるゴミの撤去費用の算出について、深さ3mまでのゴミなのか3mより下から出たゴミなのかの違いによる説明を、建物(と地下)の模型を使って分かりやすく説明。

音声データでは、工事業者が深さ3mより下かは分からないと言っているのに、国側は国会答弁で「(現場の)工事関係者と議論をしてまさに3mより深いところからゴミが出たということを確認した」。工事関係者は「(国の説明が正しいとは)思わない」「うちらは利用されてきた」と証言。

国は「会話の一部が切り取られたもの」と言っていたが、公表されていない長時間の音声は工事業者の証言を裏付けるもの。財務省「承知していない」。

会計検査院の検査や検察の捜査でも明らかになっていない。今後残りの文書が開示される予定。

最後に、赤木さんの妻のインタビューが流れて、番組終了。

新たに開示された内容を元に、問題点を精査し、模型などで視覚化して理解しやすいように表示し、関係者や識者へのインタビューとコメントを取っており、30分の報道番組として、タイムリーさと内容の深さのバランスの取れたものだったと言えるだろう。

導入部とエンディングで、今回の開示で肝要な役割を果たしている赤木さんの妻のインタビューコメントも、この問題の思いの重みを感じさせるものだった。

3.情報が初出かどうかの(個人的)判定

森友問題では、複数の時系列を把握する必要がある。

特に財務省では、実際に取引が行われた時系列と、それを改ざんしていた時系列が存在していた。(そして後者は今なお現在進行中である)。

また、財務省に限らず、様々な関係者のそれぞれの当時の立場での過去の時系列が存在しており、さらに、

「どこの放送局・新聞・雑誌・ネット媒体で、いつ報道されて、どの内容が明らかになったのか」

を時系列で把握していないと、その情報が、新情報であるかどうかも判定できない。

例えば、ニュースタイトルに「独自」と銘打っておきながら、主要な部分で他社のスクープの繰り返しであるケース。

その社にとっては新情報かもしれないが、すでに他社で報じられた内容であることは、よくある。一方で、これを単なる「(新情報の無い)他社の後追い」と切り捨てることも可能だろうが、中には、報道社としての意地があるからか、関係者への取材を掘り起こして細かい部分で記事に新情報が含まれていたりすることがあったりするので、隅々まで把握していないと見逃してしまうケースも多々ある。(個人的にも、過去、後から新情報に気付いたケースが何度もあり、今なお見逃したままのケースもあると思う)。

恥ずかしながら、私は、こんなブログ記事を書いていながら、森友問題での関係者でもなく取材者でもなく、(この問題で特定の情報を得るために直接的な)外出も出費もしたことがなく、マスコミやネットから一般に手に入れられる情報のみから、あーだこーだと言っているだけの○○だ。

ただ、そういう立場だからこそ、特定の報道社にこだわることなく、一般に流れている情報のみから、何が新情報か、何が既出なのか、判定できることもあるだろう。

今回のクローズアップ現代で放送された何点かの「新情報」について、当ブログ記事での過去の記述を参照しながら、新情報か否かの、個人的な「判定」をしたい。

「近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容」は初出か?

放送では、ナレーションで、

「今回はじめて近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容が明らかに」

と流れた。(個人による書き起こしによる再現のため、一部正確でない可能性があります。以下同様)

この、「近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取り」の文書については、2019年11月5日のテレ東NEWSで報じられたものと同じのものを含むもの(同じ原本を含むもの)だと考えられる。

テレ東BIZ、”【独自】 財務省「森友文書」5,633枚入手”、2019/11/05。

https://www.youtube.com/watch?v=ookaQa_WrH4(参照2025-05-02)

当ブログでは、「森友問題」テレビ東京による「財務省不開示文書入手」ニュースから分かったこと(2019/11/05)[公開:2019/11/06]で取り上げている。(当時参照した時はYouTubeチャンネル名が「テレ東NEWS」だったのが、現在は「テレ東BIZ」に変わってはいるが、内容はそのままで残っているようだ。現時点での個人的な確認)

2019年のニュースでは、川内博史議員による情報公開請求に対し、財務省は不開示決定したものの、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」が、財務省の判断は「違法」であり、「決定を取り消すべきだ」としたことから、開示に踏み切ったとみられるが、その多くは黒塗りだった、と伝えている。(同上からのまとめ)

財務省は、改ざんを認めた(2018年3月)上でなお、国会議員による公開請求に対して不開示決定をし、それを審査会で違法認定(2019年6月)されてもなおほぼ黒塗りで公開した文書(2019年11月ごろ)を、自死した財務省職員の妻の公開請求裁判の高裁判決が出て(2025年1月)、首相の指示があって、今回ようやく黒塗りを(一部分を除いて)解除して公開した(2025年4月)ことになる。

2019年の(公開とは到底言えない)公開が、ほぼ黒塗りで内容が分からなかったことを踏まえれば、

「今回はじめて近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容が明らかに」

との表現は、「今回はじめて」「明らかに」という部分も含めて、正確で、新情報であると評価できる。

「本省が取引を主導」は初出か?

放送では、今回公開された文書を元に、

「本省が取引を主導」

していたことが明らかになった、と明言している。

この問題で財務省本省が主導していたことは、問題当初から疑われてきた。その後の様々な証拠・証言からも本省が主導していることは裏付けられている。

例を挙げると、赤木氏は遺書となった手記で「本省主導」と書き残しており(作成2018年3月ごろ、遺族による公表2020年3月)、また、当ブログでも、財務省が改ざんを認めた後に公表した(近畿財務局の職員が「残していた」)応接録から、本省が当初から係わってきた痕跡があることを指摘している。[当ブログ記事(2018/11/21公開)ほか]

今となっては、本省が主導していたという事実は何ら目新しくないように見えるかもしれない。

ただし、「取引」について限れば、話は別である。

財務省は、取引を本省が主導したとは、未だに認めていない。

誤解を受けやすいが、財務省が改ざん報告書(2018年6月)で認めているのは、本省の役人が改ざんに中核的役割を果たし、近畿財務局の役人は従属的だったとするもので、「本省が改ざんを主導」とはしているが、「本省が取引を主導」とは言っていない。

二度にわたる会計検査院による検査・調査でも、不起訴不当を受けた検察による捜査でも、取引については、「食い違いを解消できなかった」、「覆すに足る証拠がない」などと、曖昧な表現にとどめられていた。両者とも、それを解消したりその証拠を見つけ出すことが仕事であるはずなのに、それすらせずに、調査能力と捜査能力を疑うような内容で終わっている。[当ブログ記事(公開2019/04/07)ほか]

財務省が頑なに認めず、会計検査院や検察によって潔白を証明できない以上、新証拠が発掘されれば、そのたびに、「新たに明らかになった」と表現するしかない。

財務省本省が取引を主導していたことは明らかであることは、この問題を追っているものからすればずっと前から分かっていたことではあるが、財務省がそれを認めない以上、新情報が出るたびに、

「本省が取引を主導」

と突き付けてやることが必要だろう。

その意味で、「本省が取引を主導」というのは、今回の放送で、(工事会社の証言・証拠を含めて)新事実としてのニュース価値があったと評価できる。

補足)
ただし、個人的な見解として、「取引」全般について「本省が主導」という意見に異論は全くないが、「ごみストーリー」については、本省主導と言い切れない可能性があることを補足しておく。[当ブログ記事「森友問題」8億円値引きごみストーリーにおける国土交通省の関与についての現時点でのまとめと考察(2020/04/08)(公開2020/04/08)ほか参照]

「連続して抜け落ちていた通し番号」は初出か?

番組が取り上げていた、

「通し番号が振られていた文書」

については、財務省が改ざん報告書を公表(2018年6月)する前に、事前に公表した近畿財務局の職員が「残していた」資料(2018年5月23日公開)と同じもの(同じ原本)だと考えられる。(注:後から気付いたことだが、正確には、「同じものを含むもの」だったと考えられる。理由は後述)

平成30年5月23日
(中略)
森友学園等との交渉記録【売却まで】(ファイル容量が大きいため分割しております。)

《引用者注:PDFファイルへのリンクについては省略。当資料の内容については、個人的に過去にダウンロードしたものを参照しており、それが現時点でダウンロードできる内容と一致しているかどうかについて確認はしておりません。だって、改ざんした組織の資料なんですから》

決裁文書に関する調査について : 財務省(参照2025-05-03)

番組で語っていた、通し番号の数字、対象となる期間が、この「資料」と一致している。(注:この点については、補足を追記して後述。)

個人的には、2018年5月23日にこの「資料」が公表された当時から、通し番号とその欠番、特に「3S写真」の時期の分が欠けていることなどは、いろいろな人から指摘されていた記憶がある。

その意味では、通し番号に注目して欠番があり、欠番と政治とのかかわりがある時期が一致し、かつ、財務省が(改ざんを認めた上で今なお)隠している(みえみえの)動機のあることは、今回が新情報とは言い難い。

ただ、番組では、1枚1枚時系列順に並び直し、通し番号の欠番と連続して欠けている番号の時期を可視化して、さらにそこに、何が起こっていたかを他の資料からの時系列を照らし合わせ、

「いずれも政治と接点のあった時期と一致」

との結論を導き出していた。

正直言って、個人的には、通し番号の欠番を拾い出すという発想はあっても実際にすべて並べ直す労力を考えたとき、実行する気にはなれなかった。通し番号は380までだが、実際の「資料」は、一つの番号に対して、補足資料がついていたり枝番があったりするので、トータルの枚数では1000ページ弱ある。[追記2025/05/06:ここで述べている「資料」とは2018年公開の応接録であり、実際に放送されたものは該当する通し番号のものが何ページあったかは不明。追記以上]それを番号で整理して時系列で並べ直して政治との接点をスタジオで視覚化したのは、この番組が初めてではないだろうか。(個人の確認です)

この点については、地道な作業による発掘だと、評価したい。

補足:
後から気付いたことだが、NHKが今回報じていた「通し番号が振られていた文書」は、2018年公開(今でも財務省のホームページで全文ダウンロードできる)「資料」の「森友学園等との交渉記録」と同じものではなく、正確には、同じものを含み、かつ、新たなページを加えたものだった。上記の内容は、全く同じものだと思い込んでいたものによるものですが、間違った経緯と気づいた経緯について意味があるので、細かい点での訂正はせずにそのままにしています。このことに気付いた経緯と意味するところについては後編で後述。

「工事事業者社員が記録していた4日間約8時間の音声データ」は初出か?

番組では、建設業者の社員が取材に応じ、

「社員たちは交渉の一部を記録していた 4日間約8時間」

と紹介され、

「3月14日」、「3月25日」、「3月30日」(いずれも2016年)

の打ち合わせのものとされる音声が流れた。(日付については番組テロップ等からの個人的な確認)

森友問題では、問題当初から、音声データが複数、小出しにされるかのように様々なメディアで出てきたため、どの音声が新情報かは分かりにくい。

問題発覚後(2017年2月)から改ざん発覚前(2018年3月)までにメディアに公表されて主に注目された音声データは四つあり、それぞれ一部公開後にしばらくして全編公開という経緯を経て、最終的には、共産党議員の宮本岳志衆院議員、辰巳孝太郎参院議員の会見(肩書は当時)により、その四つの日付が、

2016年3月15日。3月16日。3月30日。5月18日。

だと特定されている。

日本共産党、”国・森友「口裏合わせ」”、2018/02/15 に公開。

https://www.youtube.com/watch?v=9WAC8LZHzlo

(参照2018-02-17)[当ブログ記事”「森友問題」音声データがすべて出てきて分かったこと(2018/02/17)”からの再引用(参照2025-05-03)]

これらの既出の四つの音声は、いずれも、学園側(関係者)が録音していたものだと考えられる(あくまで個人的な予測)ので、今回工事事業者社員が録音していたものとは、仮に同じ内容だったとしても、録音機械が異なっていると見ていいだろう。その意味では、今回番組で公開されたものは、データとして(の形式として)は、初出と判定したい。(個人的な判定です)

あとは、内容についての確認になる。

ここからは、個人の印象やうろ覚えの記憶による、個人的な評価になることをお断りしておく。

番組では、3月14日の音声をまず(一部分)取り上げていて、この日は既出の「四つの音声データ」とは違う日付であり、初めて聞く音声だ(と思われる)が、内容的には驚きはない。(私のうろ覚えの記憶で申し訳ないが、この日の音声データも「四つの音声データ」からずっと後に目立たない形で出ていたような気もするので、初めて聞く音声ではないかもしれず、内容的に驚きがなかったのもそのせいかもしれない。あくまで個人のうろ覚えの確認できなかった記憶です。)

時系列的には、翌日の理事長夫妻による本省訪問(3月15日)につながる流れだが、番組では、夫妻が棟上げ式で昭恵夫人との関わりや訴訟をちらつかせることを強調するかのようなシーンをピックアップしていた。

続いて、3月25日の音声。おそらくこの問題で初めて聞く日付で初めて聞く内容だった。(個人的な記憶)。学園側と工事事業者との打ち合わせのようなので、録音したのが工事事業者のみだった可能性がある。ただ、学園側弁護士が同席していたかは不明で、同席していたら録音していた可能性もあるが、内容的には、工事事業者に(協力を)「お願い」する形であったので、学園側から音声が出る動機は低いと考えられる。よって、工事事業者から出た新情報だと判定する。(個人的な判定です)

放送されたのは、理事長が工事業者に「お願い」する内容なのだが、机をたたく音かと思われる大きな音がドンと、二回にわたって流れ、学園側が工事業者に対して「強圧的にお願い」していると印象付けるものであった。

最後に、3月30日の音声だが、この日付は、森友問題での「3mより下からごみストーリー」の重要な日付として過去何度も取り上げられており[当ブログ記事ほか]、音声データもすでに何度も取り上げられている。この音声データの初出(一部)は、2017年8月1日にニュース番組『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)で、2017年9月11日の同番組でより詳しく取り上げられていた。[当ブログ記事ほか]

徹底ツイセキ/森友学園問題
国有地8億円値引き “口裏合わせ”新疑惑
2017年09月11日

国有地8億円値引き “口裏合わせ”新疑惑 | 徹底ツイセキ/森友学園問題 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ(参照2025-05-03)

今回の「クローズアップ現代」の放送でも、(8年近く前の)関テレの上記のものと同じ部分と思われる部分が抜き出されており、内容的には新情報とは言い難い。

補足:
ただ、番組で音声を初め聞いたとき、一部、聞いた覚えがない声だった気がしたので新データかと疑ったが、実際には「音声を変えています」ということだった。放送に当たって、どうやら国側と学園側弁護士の音声のみを変えていたようだ。なぜこの二者の音声を変えた理由はよく分からないが、もし仮に、工事事業者が録音していたものが、これまで既出だった録音と異なり初出であったのなら、内容は同じでも録音機材が違うという点でのみ新情報だと言える余地はあるかもしれない。

内容はついてはこれまでのものと重複はあるが、「工事業者が提供した音声データ」については初出だと判定できるだろう。


以上のように、今回の放送は、様々な新情報を含み、質の高い内容だった。

ただ一方で、もう少し、踏み込んでほしいと思えるところもあった。

30分の帯番組ではいろいろな制約もあるだろうが、気になった点を、続きとなる後半記事に挙げておきたい。


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