この記事のこの場所に「この記事には広告が含まれます」という一文が目立つように書いてあります(ここはそういうところですよ?)
《以上広告アナウンスでした。以下本文》
前編からの続き。
前編では、2025年4月22日に放送されたNHK「クローズアップ現代」の内容をまとめて整理し、新たにわかったことが新情報なのか既出の情報なのかの(個人的)判定を行った。
それを踏まえて、後半では、「クローズアップ現代」が「報じなかったこと」(触れなかったこと・踏み込まなかったこと)について、これまで蓄積してきた森友問題の情報を復習しながら指摘しつつ、今後の予習となるような内容の整理をしたい。
[公開:2025/05/07 更新:2025/05/08]
前編の内容
「森友問題」NHK「クローズアップ現代」(2025/04/22放送)で分かったこと(前半)-要旨の整理と情報の初出判定(2025/05/05)
1.「クローズアップ現代」(2025/04/22放送)の内容の要旨
2.放送内容についての評価
3.情報が初出かどうかの(個人的)判定
「近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容」は初出か?
「本省が取引を主導」は初出か?
「連続して抜け落ちていた通し番号」は初出か?
「工事事業者社員が記録していた4日間約8時間の音声データ」は初出か?
《以下、前編記事からの再引用》
徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が
NHK (Japan Broadcasting Corporation)、「クローズアップ現代」、”同上”。徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が – クローズアップ現代 – NHK。「初回放送日:2025年4月22日」。(見逃し配信NHKプラスでの参照2025-04-26)
初回放送日:2025年4月22日
当ブログ記事は、
NHK (Japan Broadcasting Corporation)、「クローズアップ現代」、”徹底検証 森友文書開示 「8億円値引き」原点で何が”。初回放送日:2025年4月22日(NHK総合午後7時30分-午後7時58分)(同上)
をテレビ放送で視聴した内容を参照し、また、見逃し配信サイト「NHKプラス」(登録が必要)で同番組の配信[配信期限 :4/29(火) 午後7:58 まで]を(視聴可能な期限の間、)再視聴して参照したものを反映しています。(見逃し配信NHKプラスでの参照2025-04-26)
テレビで放映・再配信された内容を元に個人的に書き起こしている箇所もあるため、実際の音声や番組字幕と異なっていたり、一部不正確な内容があるかもしれませんが、ご了承ください。
また、今回、新たに公開されて報道されている一連の開示された森友文書については、全文が公開されている場所を個人的に(ネット上で)見つけられなかったので、当ブログの内容は、報道されている情報のみから反映されていることもお断りしておきます。
《前編記事からの再引用、以上》
4.「クローズアップ現代」が報じなかったこと
前編でまとめたように、今回の放送は、様々な新情報を含み、質の高い内容だった。
ただ一方で、もう少し、踏み込んでほしいと思えるところもあった。
30分の帯番組ではいろいろな制約もあることも承知しつつ、放送では「報じられなかったこと」で気になった点を、挙げておきたい。
「本省理財局から行かれた総務部長、管財部長」とは?
放送では、
「今回はじめて近畿財務局と財務省本省のメールや電話のやり取りの内容が明らかに」
として、いくつかの文書の内容を紹介していたが、その一つに、
『本省理財局から行かれた総務部長、管財部長がおられるのだから厳しく指導しているものと思っていた』
という文言をピックアップしていた。
少しでも興味があれば、そこに記されている
(当時の)「本省理財局から行かれた総務部長、管財部長」が誰なのか
と、当然気になる所だが、放送では、それ以上触れていなかった。調べればすぐにわかるのに。(と言っても、無料で利用できるいくつかのAI(みたいな)検索で聞いてみても、正確な答えが返ってくるとは限りません。当時の個人の確認です。無料だったからなのか、それとも質問方法が悪かったのか・・・)。
放送では、その文章が、具体的にどの文書のどの日付からの引用だったのか明示していなかったのだが、私にはピンときた。数日前に該当の文書がネット記事で(一部)アップされていたのを見た記憶があったからだ。
ニュースで今回の文書が(先行)公開されたと聞いて、私はネットで全文が読めそうなところを探し回っていたのだが、見つけ出せなかった。ただ、その途中、週刊文春で相澤冬樹氏が記事を書いていることを知り、ネットで公開されている記事を閲覧した。
「3億1900万円余で」森友国有地値引きの不当さ示す新事実 開示文書で初めて明らかに
「3億1900万円余で」森友国有地値引きの不当さ示す新事実 開示文書で初めて明らかに | 文春オンライン(参照2025-05-04)
相澤 冬樹
2025/04/09
source : 週刊文春 2025年4月17日号
そこに、公開された文書を何点かをピックアップして写真で載せてくれていて、その一つに、
⑦応接録(平成26年12月8日)2枚目
《引用者注(環境依存文字):冒頭の文字は数字の7の丸文字》
[写真](20ページ目)「3億1900万円余で」森友国有地値引きの不当さ示す新事実 開示文書で初めて明らかに | 文春オンライン(参照2025-05-04)
があり、その文書に、上記で取り上げた、
「本省理財局から行かれた総務部長、管財部長がおられるのだから厳しく指導しているものと思っていた」
という一文が含まれていた。「クローズアップ現代」で取り上げられていた一文と同じ内容だ。
そもそも、私がこの日付(平成26年12月8日)の文書に注目していたのは、2019年11月5日放送のテレ東ニュースでこの文書が(ほぼ黒塗りで)、ちらっと画面に映っていたからだ。[テレ東BIZ 、【独自】 財務省「森友文書」5,633枚入手、だいたい1:03~1:14。該当箇所の後に(人によっては)不快に思われる映像が流れるかもしれないので閲覧にはご注意ください。当時の個人的記録については当ブログ記事参照。]
そのテレ東ニュース自体が、今から5年半ほど前の話なので、改めて補足しておく。
財務省は改ざんを認め(2018年3月)、改ざん報告書を出す(同年6月4日)前に、1000ページ近くの「応接録」を公表(同年5月23日)するのだが、その「応接録」には、(後から分かったことだが)「平成26年12月8日」の文書は含まれていなかった。
その後、川内議員の請求により、5633枚が開示されたのだが、「新たに公開された応接録や交渉記録は、日付や一部の担当者の名前を除き、その多くが黒塗り」[テレ東BIZ、同上]だったことが、テレ東NEWSで報じられた(2019年11月5日)。
テレ東の放送で映っていたのは、3枚の文書を重ねながらほぼ黒塗りの状態が見えるように扇状に広げたもので、画面からは日付が読み取れたので、その日付が2018年に公表されていた「応接録」に含まれているかどうかを確認すると、その日付のものはなかった。また、内容は黒塗りなので、何が書いてあるかは分からなかった。(個人的には、その前後の時系列から「公租公課」の取扱関連のやり取りではないかと予想していたが。当ブログ記事ほか)
そして今回、公表された文書の中に、「平成26年12月8日」の文書が含まれ、黒塗りが(一部分を除いて)外されていた(2025年4月)。
書かれていた内容は、個人的に予想したものとは違っていたが、
「本省理財局から行かれた総務部長」
の部分は、これまでの私の(別の)予想を補強するものだった。
この総務部長については、過去、当ブログで指摘している。
ここで注目したいのは、当時の近畿財務局の総務部長だ。
この総務部長は、2014/07/01~2015/06/30の期間、在任していて、前職は、国有財産業務課長だった。「本省相談メモ」では2014/05/23に業務課長が了としているが、その当人である。つまり、森友学園との交渉経緯を知る人物が本省から近畿財務局の総務部長として異動してきたのである。そして近畿財務局で賃貸契約が結ばれ、籠池氏が情報公開請求をし、「公租公課」メモの抜き取りが行われたのが2015年6月で、総務部長は6/30に異動している。(当ブログ記事「森友問題」で今日分かったことのまとめと考察(2018/09/21))
「森友問題」会計検査院報告「その後の検査について」(2018/11/22)から抜け落ちた「公租公課」について – はじめはみんな初心者だ(2018-12-29公開、2025-05-04参照)
行政文書の管理と公開請求の窓口が総務部であることを考えれば、この総務部長が何らかのかかわりを持っていたと考えるのが、当然である。
ただし、この人物は、2018年7月17日付で、四国理財局長を最後に辞職している[財務省ホームページ人事異動(平成30年7月17日) (PDF:159KB)]ため、当時の理財局長と同様に処分の対象外になってしまっている。処分の対象ではないだけに、正直に語ってもらうことを期待したい。
直接取材したわけでもない私が当時のこの総務部長に注目できたのだから、詳しい取材記者の人たちは、当然この人たちに取材は行っているだろうが、それが報道された記憶はないので、今回この一文をピックアップしたNHKも含めて、今後の取材結果の報告を期待したい。
補足:「新たにわかった」「通し番号」についての個人的解釈の訂正
今回この「平成26年12月8日」文書と、2018年5月23日に公開された「応接録」を参照した際に気付いたことだが、「通し番号」についての私個人の解釈の訂正を。
NHKニュースでは「番号が3つ以上連続して欠落している部分」の時期と「政治と接点のあった時期」が重なっていることが「新たにわかりました」と報じている。[森友学園開示文書 欠落部分は“政治と接点あった時期”【NHK調査】専門家のQ&Aも | NHK | 森友学園問題(2025年4月22日 19時28分)。参照2025-05-04]
この報道を聞いたとき、よく調べたなあ、と賞賛しつつも、もっと他にも欠番があったようなとの印象があったのだが、わざわざ確認しようとまでは思わなかった。
だが、今回、2018年に公開された「応接録」に、「平成26年12月8日」文書が無いことを(念のために)確認するために元資料に当たったところ、無いことは確認できたのだが、その前後の通し番号がだいぶ飛んでいることに気付いた。また、今回公開された「平成26年12月8日」文書には通し番号が入っていたことも確認できた。(さらに言うと、2019年のテレ東ニュースの映像でも、不鮮明だが右肩上に通し番号が入っていたことを、今更だが、確認できた)。
つまり、2018年に公開された「応接録」にあった欠番のいくつかは、今回、新たに追加されて(黒塗りを外した状態で)公開されていた。
NHKで報じられた「番号が3つ以上連続して欠落している部分」は、2018年公開(今でも財務省のホームページで全文ダウンロードできる)「資料」ではなく、今回開示された(ネット等で全文開示されていることが個人的には確認できない)文書を参照したものだった。
今回の公開文書を2018年資料と枚数も(黒塗りの)中身も全く同じ文書だと思い込んでいたのは、私の誤りだった。訂正しておわびします。(間違った経緯とそれに気づいた経緯については重要な点を含んでいるので、情報が間違いであることを注記して、当ブログの前編記事の該当部分も含めて、本文をそのまま残しておきます。)
ただ、この間違いで気づいたことが。
・2018年公開の(多くの欠番を含んだ)資料は、財務省の改ざん報告書の公表前に出されたもの
・今回公表された資料には(依然として欠番を多く含むものの)欠番を埋めるページが含まれている
・欠番(黒塗り)だったページには、「本省理財局から行かれた総務部長」など本省との関わりを示すものが
2018年公開の応接録が、財務省改ざん報告書の前提であったことを考えれば、
今回新たに埋められた欠番の内容(特に、本省との関わり)は、(2018年公開の応接録には含まれていないので)2018年の報告書には反映されていない。
2018年公開「資料」に、今回公開された資料が抜けていたのは、まるで、
2018年の改ざん報告書の内容と齟齬がないように、応接録から問題があるページを抜いたのか
のようだ。(これまでの財務省の経緯からすれば、この部分を意図的に抜いて隠そうとした、と解釈するのが当然だろう。改ざんを認めた上でなお。)
2018年の財務省改ざん報告書は、改ざんが発覚して、財務省自身が調査したものである。財務省は、改ざんを認めた上でなお、今回新たに公表された内容、特に本省との関わり、が反映されていない(隠したままの)、不十分な報告書を出していた、との結論になる。(そして、さらに今回の公表でも欠番のままである状況を見ても、財務省はこの期に及んでまだ隠そうとしている。)
工事業者が記録していた「4日間約8時間」の残りの一日は?
放送では、建設業者の社員が取材に応じ、
「社員たちは交渉の一部を記録していた 4日間約8時間」
と紹介され、
「3月14日」、「3月25日」、「3月30日」(いずれも2016年)
の打ち合わせのものとされる音声が流れた。(日付については番組テロップ等からの個人的な確認)
記録していたのが4日間で、番組で紹介されたのが3日分であれば、その残りの1日がいつの日なのか気になる所だが、放送を見た限りでは、分からなかった。
これは単に、取り上げるほどの内容が含まれなかった日があっただけかもしれない。
ただ、多くの予想外や(意図的・無意識両方の)ミスリードやデマが含まれる森友問題。前もって、思いつくだけのパターンを整理しておくことは無駄ではないだろう。
そこで残りの一日がいつなのか、いくつかの可能性を考えてみる。
放送された三つの日よりも前(「3月14日」より前)である可能性
放送では、最初の「3月14日」の音声について、
「ただならぬ空気を感じた社員たちは交渉の一部を記録していた」
とのナレーションで紹介している。(放送からの個人による書き起こしで正確でない場合があります)
慌てて録音を開始したようなニュアンスで、これが録音のスタートだったという解釈できるような放送の仕方だった。
これだけ見れば、「3月14日」の録音が最初でそれ以前は無い、と考えるのが妥当かもしれない。
ただ、急きょ録音できたということは、逆に言えば常に録音機器を持参していたということでもあり、それ以前も音声を録音していたとしてもおかしくない。
その意味では、「3月14日」が最初だとは断定できず、一方で、それ以前にもあるはずだという説得力もない。
仮に「3月14日」以前に、工事業者が録音していたとしたら、個人的な記憶からの予想になるが、
前年の工事請負契約を結んだ2015年12月3日以降で、
・設計事務所や材木業者ら同席で第1回の打ち合わせをした2016年1月29日か第2回(2月)
・「ゴミ」が出て来たことについての学園側に報告をした3月11日(その前後~3月14日前日まで)
辺りのものが予想されるだろう。(個人的なメモ書きからの記憶を再現していることもあり、正確な日時ではない可能性があります。また、「2015年12月3日以降」としていますが、その年9月以降の土壌処理で下請け参加しているという情報があった記憶もあるので、それ以前の録音が存在する可能性はゼロではありません。ただし、当時はまだこの問題での重要な情報を得る立場になかったとも思われるので、考慮に入れていません)。
放送された三つの日のその期間内のいずれかの一日(「3月14日」~「3月30日」の間でかつ放送された「3月25日」以外)である可能性
放送された三つの日は、「3月14日」はきっかけとなった録音であり、「3月30日」は(内容的には既出だったが)「ゴミストーリー」の重要な日であるので、取り上げることに意味がある。そして「3月25日」は(内容的にもおそらく)未発表のものであり、新情報であることを証明する音声になっている。(前編での考察)
普通に考えれば、残りの一日は、きっかけの「3月14日」から重要な「3月30日」のこの期間のいずれかの一日である可能性が一番高い。
その期間中の、「3月25日」の分だとして放送されたものは、学園側が工事事業者に対して(高圧的に)「お願いする」ところを抜き出しており、(未公開の音声という点以外では)個人的にはそれほどの驚きの無いものだった。
仮に、残りの一日の音声もその期間中だった場合には、それほど重要性の高い情報が含まれていなかった、ということも予想される。
これは、上記の「3月14日」より前の音声の可能性の場合にも言えることだが、学園側と工事業者(だけ)の打ち合わせの場合、それほど重要な証言は出てこない可能性が高い。
この問題のこの時期で重要なのは、「2015年9月4日」の打ち合わせに(も)出席していた設計会社と国側の人物(近畿財務局、大阪航空局の職員)の発言と立ち回りであり、工事業者は(言い方は悪いが)後から登場した脇役に過ぎない。
したがって、学園側と工事業者のみが打ち合わせした音声は、この問題の補足情報としての価値はあるが、それほど重要な新情報が期待できず、放送で抜き出すとしたら、(悪意のある言い方をすれば、「クローズアップ現代」がしたように)学園側理事長の「強圧的な」印象が残るシーンを出して(視聴者の目鼻を引いて)新情報だとアピールするのが関の山だろう。
言ってみれば、仮に、残りの一日も、「3月25日」と同様の内容(学園側と工事業者のみの打ち合わせ)だったら、放送で言及する必要なしと判断し、残りの一日を明らかにするまでもなかったのも当然だと考えられる。
一方で、当時(2016年)の財務省の応接録からは、
工事業者が埋設物の撤去費用見積もりを学園側にメール送信《応接記録3月24日》
学園側弁護士「今朝、設計業者と建設業者と打ち合わせ」《応接記録3月30日》
などとある(2018年財務省公表応接録[同上]より個人的な要約)ので、この期間に工事業者が学園側弁護士と設計業者と打ち合わせをして録音をしていた可能性は高く、学園側弁護士と設計業者の発言を記録していたのなら、重要度は高くなる。
ただし、仮にその証言が含まれた内容だったとしても、今回の「クローズアップ現代」の主題(「国側の本省主導」)から少し外れ、限られた放送時間では扱いきれないだろう。
その場合、取り上げたくても取り扱えなかった、と予想できる。
放送された三つの日よりも後(「3月30日」より後)である可能性
「3月30日」よりも後であったとしても、前述したように、学園側と工事業者のみの打ち合わせであれば、補足情報としての価値はあっても、放送する価値があるかどうかは難しいところだ。
ただし、それ以外の(重要な)関係者の発言が聞けるのであれば、意味合いは変わってくる。
そうなると、「3月30日」以後で、(録音できる場に立ち会っていたという意味で)工事関係者が参加していて、かつそれ以外の主な重要な関係者が参加している打ち合わせが行われている日が注目される。
それが想定される日として、挙げられるのは、
「4月5日」
だ。
この日についての経緯を説明する。
私が、「4月5日」に初めに注目したのは、(改ざん発覚後の)2018年の国会答弁で、太田理財局長が、辰巳孝太郎議員への答弁で、いきなり列挙した日付の一つに含まれていたからだ。(肩書はいずれも当時。)
117 太田充
国会会議録検索システム、会議録テキスト表示、「第196回国会 参議院 財政金融委員会 第12号 平成30年4月12日」。発言URLを表示。https://kokkai.ndl.go.jp/txt/119614370X01220180412/117(参照2025-05-06)
(前略)
それは、今になれば、皆さん森友学園のこの経緯、例えば八・二億円とか九億五千六百万とか、あるいは、もう辰巳委員はお詳しいですから、三月十一日、三月十四日、三月十五日、三月十六日、三月二十四日、三月三十日、四月五日、それぞれ何の日でどういうことかってすぐお分かりなわけですが、
(後略)
この答弁当時は、財務省は改ざんを認めたものの、調査中を理由に、改ざんを「指示」した本人や関わった(とされる)職員らは表に出てこず、理財局長らが代わりに答弁していた。
そんな中、理財局長がいきなり日付を列挙したのだが、当時の私でも、それまでに報道されていた内容(公開された音声データや合同ヒアリングの映像など)から、それぞれの日付が「この日は何の日」などとすぐ分かったのだが、最後の一つ、「4月5日」だけはピンとこず、「何の日」なのか確証は持てなかった。(当時のブログ記事参照)
その後、財務省は改ざん報告書を発表する前に、応接録の資料を公表するのだが、その中に、「平成28年4月5日」のものが含まれていて、学園側弁護士、工事業者、設計業者と近畿財務局、大阪航空局の役員が打ち合わせをしたことが記されていた。
この日が重要なことは、太田理財局長(当時)が教えてくれた。
ただ、国会答弁当時、これまで報道もされず(少なくとも私個人は)ノーマークだった「4月5日」を、太田氏がわざわざ国会でピックアップして答弁したのかは、不明だ。(意味が分からない)
もちろん、太田氏は、答弁当時、(当時はまだ公開されていなかった近畿財務局の)「応接録」を読める立場にあっただろうから、応接録を読んで「4月5日」の打ち合わせの重要性を把握していたことには、何ら不思議ではない。(さらに言えばその記録は本省にも配布されていた痕跡がある。また、以前、太田氏が「私なりに勉強して」とどこかで答弁していた記憶があった。その「勉強」した資料をこっちにも見せろと思ったものだが。)
一方で、当時、一般には、報道されてから知ることのできる情報は、様々に(小出しにされた)音声データから類推することがメインで、「四つの音声データ」として取り上げられていたのは、
2016年3月15日。3月16日。3月30日。5月18日。
のもの[共産党議員の宮本岳志衆院議員、辰巳孝太郎参院議員の会見(肩書は当時)による特定。前編参照]で、「5月18日」以外は、太田氏の列挙した日付に当てはまる。(話は少しそれるが、ここでの経緯に限れば「5月18日」の音声は考慮しなくてよい。理由については当ブログ記事ほか参照)。
この時点では、「4月5日」は、注目されていた音声データでも対象日ではなく、その日に打ち合わせがあったこと自体すら(少なくとも報道レベルでは)知られていなかった。
しかし、太田氏は、「4月5日」をピックアップした。一般には注目されていなかったのにもかかわらず。
ここで考えられるのが、「公表されていないだけで、4月5日の音声データも当然あるだろう」と、財務省側が認識していた可能性だ。
すでに、3月16日や3月30日の打ち合わせでの(学園側の誰かが録音したと思われる)音声データが報道されていた。当然、他の日の打ち合わせでも(学園側の誰かが出席していれば)録音されていると考えるだろう。そして応接録を見れば、「4月5日」の打ち合わせでも関係者が出席している。この日の録音データも国会で追及する側に当然渡されているいるのでは、と財務省側が想定してもおかしくはない。
また、(当時の個人的な記憶だが、)財務省は、音声データの日付に対して、「3月下旬から4月にかけてのもの」としか答えず、日付は頑なに特定してなかった。これも「4月5日」を想定していた答弁だったかもしれない。
太田理財局長が(過剰に)反応し、突然列挙した日の内の不自然な「4月5日」。
その意味では、「4月5日」の音声が存在し、それが今回の公開されなかった残り一日の工事業者による音声データだという可能性も考慮に入れておくべきだろう。
工事業者の「利用されてきた」とは?
今回の放送でのインタビューでは、工事業者の社長とされる人が、
「ウソにウソを重ねてまたウソを重ねてという積み重ねですよね そこの中でウソをつくためにうちらは利用されてきた ほんとに残念で仕方がないですよね」
と語っていた。(放送からの個人による書き起こしで正確でない場合があります)
まずは、今回、取材に応じ、音声を提供した工事業者様に、最大限の敬意を表したい。
森友問題では、「登場人物全員ウソツキ」とも言える中、正直に語ってくれる工事業者様は、「キーマン」と評していいだろう。(先ほど「後から登場した脇役に過ぎない」と評したのは、あくまで「土地取引」における役割の話です)。
善は急げで、善であれば何事も遅すぎることはない。
工事業者は多額の負債を抱えさせられた被害者であることは間違いないが、一方で、様々な不正に巻き込まれて片棒を担がされてしまった面があるのも否定できない。
そこで、工事業者がどのように「利用させられてきた」かを、(個人的な記憶とメモを元に)整理する。
「三つの異なる金額の契約書」
この問題が報道されて注目された初期に、金額の異なる三つの工事請負契約書が存在することが明らかになり、報道された。
個人的な記憶になるが、後からこの問題を振り返ってみて驚いたのが、工事業者が早い段階で、
「設計会社の指示」
と語っていたことだ。
当時の報道では、「学園側の指示」のように「○○側」と大まかな表現をしていたのが多かったので、実際に「設計会社の指示」と明言していたとは思ってもいなかった。
契約書の提出先の国土交通省、大阪府の(工事業者から事情を聞いた内容の)コメントや、それを報じるマスコミの内容が、どこか何かに配慮したような表現になるように感じた中で、工事業者が明言していたことは、個人的に「この工事業者は正直に話す」という印象を残すものだった。
「9mっていうのはちょっとわからない」
今回の放送でも取り上げられていたが、工事業者は「9mていうのはわからない」と一貫して話している。
(先述した)「3月30日」の音声データが初めて公開されて報道されたときも、この発言は取り上げられていた。
個人的には、「工事業者は2015年9月4日の打ち合わせの当事者ではないので(3mより深い)9mにこだわる必要がないから、分からないと正直に言える」とだけ考えていたが、改めてその時の立場を考えると、施主と国側の両方から、深さ9mにもゴミがあることを暗に求められていたことが想像できる。
職業人としては当たり前の態度だったかもしれないが、施主とその弁護人、相手国側の財務省近畿財務局、国交省大阪航空局の役人たちの両方から陰に陽に圧力をかけれながらも、「分からない」と言い続けたのは、率直に評価したい。
「ごみの撤去費の見積もり」
土地取引を巡る問題は、国土交通省大阪航空局が算定した値引き価格が正当だったかどうかが問われていた。
ゴミの撤去費用については、工事業者も見積もりを複数しており、その内の価格が一つが報道され、それが航空局の算出した価格よりも高かったため、主に政権を擁護する側の、単純な○○が、「適正だった」との主張を始めた。
この問題を追っているものであれば、それが適正である証拠になるわけがないと分かっていた。すでに、工事業者が(正直に)証言していたからである。
(前略)
この口裏合わせの疑惑について取材を進めると、工事関係者は…
【工事関係者】
「8億円値引きするということは最初から決まっていた。その計算式を作るために、杭打ちの9.9mという数字は使われた」
と、8億円の撤去費は、計算前から決まっていたと証言したのです。
国有地8億円値引き “口裏合わせ”新疑惑 | 徹底ツイセキ/森友学園問題 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ(2017年9月11日)。[参照2025-05-06]
「8億円値引きすることは最初から決まっていた」見積もりが「適正」だとする主張に説得力はないが、真偽などどうでもいいと考えている権力擁護側の○○には「バカ相手には数字さえあればいい」と利用された可能性がある。これもある意味、工事業者が求められて出した見積もりの情報を、都合のいいように「利用された」と言えるだろう。
聞かれたら答えるので「利用されてきた」?
これまで述べてきたように、工事業者は、問題の初期から正直に話しており、ある意味、聞かれたら正直に話すので、無自覚に「利用されてきた」と感じてしまう面があるかもしれない。
個人的に記憶しているのは、2019年1月から2月にかけて、工事業者の対応だ。
2019年1月17日の野党合同ヒアリングでの大阪出張での野党議員の写真の疑問点についての質問に対しては「深さは意識せず撮影」と答えておきながら、取材陣には「確実に深いところにごみはある」と答え、また、野党議員のマスコミへの説明で「うちの社員はいい加減のように言われた」と抗議しておきながら、写真の疑問点については「入社間もない若手の従業員」が撮影した「単純なミス」と答えるなど、右顧左眄している様子がうかがえた。(以上は記憶による再現ですので、正確さに欠ける場合があります。また、記述の際に、検索して下記の記事も参考にしています。)
森友ごみ写真「深さ意識せず撮影」と業者説明 野党視察
https://www.asahi.com/articles/ASM1K552GM1KPTIL024.html(リンク切れ、2025/05/07確認)しんぶん赤旗、”地中ゴミ深さ根拠ない 森友問題 野党ヒアリングに業者”、2019年1月18日(金)。地中ゴミ深さ根拠ない/森友問題 野党ヒアリングに業者(2025/05/07参照)
同、”森友問題 “複数箇所”ゴミ写真、実は同一箇所 8億円値引きの根拠破綻”、2019年2月6日(水)。森友問題/“複数箇所”ゴミ写真、実は同一箇所/8億円値引きの根拠破綻(2025/05/07参照)
外形だけおおざっぱに見れば、野党におかしなところを指摘されれば「私もそう思う」と返し、国の主張に根拠がないのか問われると「確実に(根拠は)ある」と返しているので、どっちつかずの八方美人の印象だ。(報道を見た個人の感想であり、ここでは善悪を問うものではありません)
ただ、中の人にとって見れば、一方から聞かれたから正直に答えたのに、報道されたのを見ると今度はもう一方が責められているので「そんなつもりじゃなかったのに」と思って、さらにその返答を繰り返しているうちに疲れてきて、「利用されてきた」と感じるのも分かる気がする。(このように勝手に解釈されるのも「利用されてきた」と思わせるものかもしれない。個人の感想です)
ひょっとしたら、今回の放送に応じたことも、当人たちにとっては、「利用されてきた」歴の一つに入ってしまうかもしれないが、取材に応じてくれたことと音声データを提供してくれたことには、この問題の解決に大きな力になっていることは間違いないので、工事業者様には最大限の敬意を表したい。
5.まとめ
今回のクローズアップ現代の放送は、新たな公開情報に基づき、分析と更なる取材で新情報を引き出しており、この問題を追っていく上で、記録しておく必要のあるものだった。
今回の放送を元に、今後も、報道各社や記者たちによる、更なる情報に期待したい。
ここからは個人的な感想。
当初は、1記事で終わらせるつもりだったが、前・後半に渡るものになってしまった。
もちろん、放送にそれだけの内容があったからこそだが、それだけでなく、当ブログで「森友問題」考察カテゴリーを記事にするのは3年半以上のブランクがあり(「赤木ファイル全文」公開を受けて記事にして以来)、その分、あれもこれもそういえば以前はなどと、書く内容が膨らんでいってしまった。
今回、先行公開された文書の全文を(ネット上で)見つけられなかったので、考察には限界があると感じていた。だが、逆に、全文を見れなかったことによって、2018年公表応接録に欠けていた分があることに気づいて同年の改ざん報告書の欠陥を発見できた。限られた情報だからこそ、限界もあるが、発見もある。
今回記事を書く上で、過去の蓄積してきた当ブログの考察記事は、役に立った、と改めて実感した。過去の復習の参考になるだけでなく、引用することで詳しい説明を省略することも役立った。一から説明し直そうとすれば、もっと長くなっただろう。一時は、諸事情(当ブログ記事)で、当ブログを閉鎖しようと考えていたのだが、アドレスを変えてまで続けてきた(記事を残してきた)意味があったように思う。
森友問題は、過去の蓄積が無いと、何が問題かさえ分からない。
今回、新たな情報で、過去の違和感はいくつか解消された。
だが、新たに生まれた違和感は、新たな情報が明らかにならない限り解消されない。
「森友問題」は終わっていない。
更なる情報を期待したい。