「新聞週間」の読売新聞世論調査は2020年も安定してやっぱりすごい

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《以上広告アナウンスでした。以下本文》

今年も、秋の新聞週間がやってきた。毎年10月15日からの1週間。

この新聞週間に先立って、日本新聞協会から発表される新聞協会賞に、読売新聞は残念ながら今年も選ばれなかった。

2020年度新聞協会賞
「戦没者遺骨の取り違え公表せず」の一連のスクープ(日本放送協会)
教員間暴力のスクープと神戸の教育を巡る一連の報道(神戸新聞社)
コロナ重症病棟 医師たちの闘い(フジテレビジョン)
焼け落ちた沖縄の象徴(沖縄タイムス社)
「にほんでいきる」 外国籍の子どもたちの学ぶ権利を問うキャンペーン報道(毎日新聞東京本社)
「ヒロシマの空白 被爆75年」「ヒロシマの空白 被爆75年 街並み再現」(中国新聞社)

[引用者により、受賞作名と報道組織名のみを抜粋して表記ました。]

一般社団法人日本新聞協会、トップページ>日本新聞協会について>表彰事業>新聞協会賞、新聞経営賞、新聞技術賞、「新聞協会賞、新聞経営賞、新聞技術賞受賞作」、”2020年度新聞協会賞”。https://www.pressnet.or.jp/about/commendation/kyoukai/works.html(参照2020-10-14)

まるで、この季節おなじみの「ノーベル文学賞受賞ならず」とともに秋の風物詩となりつつあるようだ。

そんな読売新聞だが、今年もいつもと同じように、新聞週間に先立って、世論調査を行い、その結果を、10月14日付の朝刊に掲載した。

読売新聞社は、15日から始まる第73回新聞週間を前に、全国世論調査(郵送方式)を実施した。

読売新聞、2020年10月14日朝刊、大阪本社版、13S、総合面2面。質問と回答、詳報は、特別面12面、13面。

正直に言うと、この件については、去年までにあらかたのことは語ってしまっている[当ブログ記事で取り上げた2017年2018年2019年]ので、2020年になって取り立てて取り上げるほどのことはない。

ただ、読売が2020年の調査結果を発表した10/14になって、急に当ブログの2019年の記事を見に来てくれる人が増えていた。去年の記事なので申し訳なく思い、今年も読売新聞の新聞週間の全国世論調査について、書くことにした。

すると、今年もいろいろな点が見えてきた。

今年も大して変化がないかと思いきや、間違い探しのようにいろいろとヒントを残してくれる、新聞週間の読売新聞全国世論調査はすごい。

今年もほとんど変化が無くてすごい

世論調査では、同じ質問を同じ条件で定期的に行うことで、時間の経過による変化を観察することができる。

読売新聞が毎年行っている新聞週間全国世論調査にも、毎回同じ質問があるので、見比べることが可能だ。

有効回答数

調査での質問項目を取り上げる前に、まずは、今年も有効回答数について触れておきたい。

2015年2016年2017年2018年2019年2020年
有効回答数199119681879217021762222
回答率66.37%65.60%62.63%72.33%72.53%74.07%
2015年から2020年までの読売新聞社新聞週間全国世論調査の有効回答数と、回答率(小数点第3位以下四捨五入)。去年までの数字(当ブログ記事参照)に今年の数字[読売新聞、同上]をつけ足して表にした。(作成2020-10-15)

回答率をパーセントで比べれば、2020年は、2019年と比べて約1.5ポイント増加しているが、2018年が前年と比べて9.7ポイントも増加していることと比べれば、微々たるものだ。読売新聞が、2018年の有効回答数の増加について、何も言及していない(個人の確認です)ことを考えれば、今年の増加など誤差の範囲内で、今年も変化がなかったとみていいだろう。

そうなると、どうしても2018年の増加理由が気になる。今年は国勢調査の年で、回収率の低下が課題となっているだけに、読売新聞も、2018年に回答率を上げた理由を公開して、国にアドバイスをしてあげた方がいいと思うのだが。

調査期間は10月20日(火)までとなっています。

総務省統計局、”国勢調査2020総合サイト”。https://www.kokusei2020.go.jp/(参照2020-10-15)

今年はほとんど変化なしだから関係ないけど、そのせいでより一層引き立つ2018年に有効回答数が増加した成果を一切語らない読売新聞は、奥ゆかしくてすごい。

毎年同じ質問項目

読売新聞は、新聞週間全国世論調査で、毎年同じ質問をしている項目がいくつかある。

その質問と結果の数字を読売新聞は紙面に載せてくれるので、私も今回の主な結果を、去年個人的に作成した表計算ファイルに追加で手入力した。

そうして見比べた結果、

今年もほとんど変化なし

という結果になった。

読売新聞に掲載されている数字は、%表示で小数点以下が四捨五入されているため、正確な数値比較はできないという前提付きだが、掲載されている数字を前年と比較したところ、ほとんど変化はなかった。(ざっとだが、大部分が3ポイント以内の変化に収まり、大きくても5ポイント程度の違いだった)。

こんな「今年も変化なし」という結果なのに、あらためて特集面で記事にせざるを得ない読売新聞はすごい。

無くなった質問もすごかった

その一方で、前年には存在していたのに、今年は掲載されなかった質問があったことにも気付いた。

それは、

◆あなたは、インターネットなどに多くの偽の情報が流れていると感じますか、感じませんか。

◆あなたは、インターネットなどに流れている偽の情報を、信じてしまったことがありますか、ありませんか。

[引用者注:質問文のみ抜粋]

読売新聞、2019年10月14日朝刊、大阪本社版、13S、特別面30面31面。[現物は未確認。当ブログ記事の記述からの確認(参照2020-10-15)]

の二つだ。

上の質問については、私の確認では、2018年調査から登場し、2019年にも掲載されていた。

下の質問については、私の確認では、2019年に初めて掲載されていた。

この二つについては、私も去年のブログ記事で、言及しているので覚えている。なぜ去年取り上げたかというと、2019年調査では、この二つの質問の回答で、「答えない」が15%にもなっていたことだ。そのため次のように指摘しておいた。

有効回答の内でかつ三択で「答えない」の選択が15%もあったというのは、他の質問と比べても多すぎる。これでは、この質問項目に欠陥があったのではないかと疑われても仕方がないであろう。

当ブログ記事

私の指摘が読売紙に届いたとは思えないが、今年、読売がこの質問を掲載しなかったのは妥当だと思う一方で、この不明瞭な質問をあえて続けることで、それに対する回答がどのように変遷するのかを見たかった気もする。

今年から掲載されなくなった質問についても気にさせずにいられないかのような読売新聞はすごい。

今年はじめて現れた質問もすごい

読売新聞の新聞週間全国世論調査は、去年と同じ質問も多いが、今年初めて登場した質問もある。

経年比較するための同じ質問と、その時々の時流に乗った興味や関心に基づく質問を組み合わせることで、世論調査としての価値を高めている。

今年独自の質問は、やはり、「新型コロナウイルス」に関してのものが多かった。当然と言えば当然だろう。

その中の一つが、

◆あなたは、新型コロナウイルスに関して、インターネット上に流れている偽の情報を信じてしまったことがありますか、ありませんか。

読売新聞、2020年10月14日朝刊、同上。

であり、「ある」の回答が23%だったことから、読売も見出しで、

「ネットのデマ信じた」23%

読売新聞、同上、13S特別面12面。

と載せていた。

だが、この見出しには、違和感があった。というのも、去年の調査での読売の見出しにも同じような内容があったからだ。あらためて確認すると、それは、

ネット偽情報「信じた」44%

読売新聞、2019年10月14日朝刊、大阪本社版、13S総合面2面。[現物は未確認。当ブログ記事の記述からの確認(参照2020-10-15)]

だった。

その年を表記して見出しを並べれば、

2019年 ネット偽情報「信じた」44%
2020年 「ネットのデマ信じた」23%

[読売新聞、同上。見出しを抜粋して年と併記]

となる。「偽情報」と「デマ」という表現が異なるものの、同じ調査機関が同じように行った3000人の大規模世論調査で、同じような質問で、一年でこれほど数字が変わったのなら、大きな変化であり、それを発掘した読売世論調査の大発見だと言えるだろう。

だが実際は、それぞれの年の質問は、

2019年 「◆あなたは、インターネットなどに流れている偽の情報を、信じてしまったことがありますか、ありませんか。」
2020年 「◆あなたは、新型コロナウイルスに関して、インターネット上に流れている偽の情報を信じてしまったことがありますか、ありませんか。」

[読売新聞、同上。質問文を抜粋して年と併記]

というように、異なっており、単純比較できないものだったことが分かる。

しかし、今回の読売の記事の見出しでは、何のフォローも入れていない。普通なら、小見出しをつけて「新型コロナウイルスについての調査」などを入れるものだが、今回の紙面では独立した見出しで、”「ネットのデマ信じた」23%”と書いてあるだけだった。(下の画像の赤丸で囲んだ部分を参照。ただ、あえてフォローするのなら、一番上の見出しの「コロナ下」の文字でかろうじて言及していると言えなくもない。見開き2面の反対側にある文字なので、苦しい言い訳にしかならないが。)

「読売新聞オンライン、https://www.yomiuri.co.jp/。紙面ビューアー、2020年10月14日大阪朝刊、特別面12面、13面[会員限定]」のスクリーンショットを切り抜き、該当部分の見出しを赤マーカーで囲み、プライバシー保護のため画像を一部加工し、全体にフィルターをかけています。(スクリーンショット2020-10-14撮影、2020-10-15加工)

この読売の見出しでは、「去年の質問と同様に(コロナに関係なく)『ネットのデマ信じた』の割合の数字を示している」と、読者は信じてしまってもしょうがないだろう。

(私のような)読売新聞新聞週間全国世論調査を毎年追っているものにとっては、今回の見出しを見て、「あれ、去年はもっと高かったような気がするけど、ずいぶん下がったなあ」といった、ミスリードを起こしかねない内容だ。

「ネットのデマ」について聞きながら、新聞も見出しだけ見ると誤って解釈させうることを自ら身をもって示すかのような、読売新聞はすごい。

2020年もやっぱりすごかった

読売新聞の新聞週間全国世論調査については、2019年までにすでに語りつくしていたと思っていたが、思いもよらず、盛りだくさんな上記の点を指摘することができた。(個人の自画自賛です)

いつもの項目を見て「ほとんど変化なし」という結果だけかと思っていたら、掲載しなくなった質問もあっていろいろと背景を想像させるものであったり、シンプルな見出しも、実は前年の見出しとの対比でミスリード?を起こさせる仕組みだったりと、この記事を書くために読み直してなければ気付かなかった点がたくさんあった。

こんな(たぶん読売紙も気づいていないような)間違い探しのようなレベルで、ツッコミどころを隠しているかのような読売新聞新聞週間世論調査は、2020年もやっぱりすごかった。


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