この記事のこの場所に「この記事には広告が含まれます」という一文が目立つように書いてあります(ここはそういうところですよ?)
《以上広告アナウンスでした。以下本文》
今年もまた、秋の新聞週間がやって来た。
読売新聞は、秋の新聞週間に合わせて、全国有権者3000人を対象にした大掛かりな郵送全国世論調査を行っていて、その結果を公表している。
YOMIURI ONLINE、”2018年9~10月 郵送全国世論調査「新聞週間」”、2018年10月14日 05時00分。https://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20181012-OYT8T50046.html
(参照2018-10-16)
この貴重な調査をもとに、読売新聞は様々な傾向を紙面で分析をしているが、私のような素人でもすぐに気づいた数字の変化を、その奥ゆかしさからか、積極的に取り上げていないように感じる。(個人の感想です)。
そこで今回は、読売新聞自身がなぜか取り上げない、この世論調査の数字の変化を指摘し分析することで、僭越ながら読売新聞に代わって、考察を試みたい。
1.読売新聞の分析記事の見出しの印象
今回の世論調査の結果を受けて、読売新聞が要旨をまとめた記事の見出しは、
信頼するメディア「新聞」最多64%…読売調査
YOMIURI ONLINE、”信頼するメディア「新聞」最多64%…読売調査”、2018年10月13日 22時43分。https://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20181012-OYT8T50046.html
(参照2018-10-16)
だった。正直、見出しを読んだとき、驚きもないが、その一方で、「しんどさ」を感じた。「読売新聞は嘘はついていないけど印象を良くしようと必死になっている」といった「しんどさ」を感じさせたからだ。(個人の感想です)
信頼するメディアとして「新聞」がトップに選ばれるのは違和感がなく、その「64%」という数字も実感を伴う納得感がある。ただ、その調査結果を、わざわざ、見出しで報告するほどのことなのかという点と、「信頼」「新聞」「最多」「64%」を同時に並べることにより、見出しで伝えたいポイントが分かりにくくなってしまう点に、「しんどさ」を感じてしまった。
分かりやすく、組み合わせを分けて考えると、
- 信頼するメディア「新聞」 ← まあ、新聞社の調査だからわかる
- 信頼するメディア「新聞」最多 ← まあ、他メディアとの比較でならわかる
- 信頼するメディア「新聞」64% ← 新聞調査としては低いけどそんなもんだろうな
- 信頼するメディア「新聞」最多64% ← 64%という数字で最多?
と、異なる印象を受けてしまうのだ。
また、「最多64%」という表現に、「わざわざ見出しで数字付きで載せることは、これは『過去最多』という意味なのか?」と疑問に思えたが、実際は、読売新聞による「新聞週間」世論調査で、この質問項目が設けられたのは、今年2018年からで、経年比較できる質問ではなかった。(経年比較をできる項目についてはのちに述べる。)
「64%」というそれほど高くない数字に、「最多」の文字が重なることで、この記事は、
- 新聞が信頼するメディアとして最多であることを自慢したい
- 最多でも64%しか信頼するメディアとして選ばれていないことに自虐的
のどちらかわからなかった。その違和感を抱えたまま記事を読んだが、64%で最多であることを自虐的に思っているような書き方(例えば、「64%しかなかった」、「年代別では30歳代が新聞ではなかった」といった表現)は一切見られなかった。
そうなると、この読売の記事は、
新聞が信頼するメディアとして最多である
ことを自慢したい意図があるのかと思わせ、それが「64%」という数字とともに表現されることで、
たった「64%」の信頼度(しかも、12種ある選択肢のうち3つ選べる質問なのに)で最多を誇っているかのよう
に見えて、それが「しんどさ」につながっているように思えたのかもしれない。
2.経年比較できる項目―有効回答数
「世論調査は世間を映し出す鏡」とよく言われるが、鏡が正確に対象に向いているか、鏡の歪みはどれくらいなのか、などを考慮する必要があり、事実と出た結果に誤差や歪みが出るのは避けられない。
そんな歪んだ鏡ではあるが、同じように定期的に映していれば、一定の傾向や変化に気づきやすくなる。それが、経年比較によるメリットだ。
読売新聞では、毎年、秋の新聞週間に合わせて大規模な世論調査を行ってきた。
ただ、2014年までは面接方式で、2015年から全国3000人を対象とした郵送全国世論調査に代わっていて、その結果を、web上で公開してくれている。
YOMIURI ONLINE、”2015年8~9月郵送全国世論調査”、2015年10月18日 10時44分。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20151019-OYT8T50032.html同、”「2016年10月 郵送全国世論調査『新聞週間』」”、2016年10月14日 11時08分。 http://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20161014-OYT8T50027.html
同、”2017年9~10月 郵送全国世論調査「新聞週間」”、2017年10月16日 17時00分。 http://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20171016-OYT8T50134.html
同、”2018年9~10月 郵送全国世論調査「新聞週間」”、2018年10月14日 05時00分。 https://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20181012-OYT8T50046.html
(以上すべて参照2018-10-16)
残念ながら、先に取り上げた記事の「信頼するメディア」については、2018年に初めて登場した質問で、毎年聞いていたものではなかったので、経年比較できない。
経年比較に注目して、今年の調査結果を見てまず驚いたのが、質問項目ではなく、その「有効回答数2170」という数字だった。
当ブログでは、去年の新聞週間の時の読売新聞のすごさについて記事にして、「新聞週間世論調査」も取り上げていたが、その時は、有効回答数が減っていることを指摘した。
単純な比較をすると、有効回答数は、2015年から順に、
1991人 → 1968人 → 1879人
と減っている。
当ブログ記事「新聞週間(2017/10/15~21)でも読売新聞はやっぱりすごい(2017/10/13~21)」(参照2018-10-16)
この流れに今年の結果を付け足せば、有効回答数は、2015年から順に、
1991人 → 1968人 → 1879人 → 2170人
となって、2018年は2017年までの減少傾向から一変して大幅に上昇していることが分かる。(回答率でいうと、66.37%→65.60%→62.63%→72.33%。[小数点以下3桁を四捨五入])。
%のポイントで表記すると、2015年と2016年ではほぼ変わらなかった回答数は、2017年では3ポイント下がっているが、2018年は、前年の2017年より10ポイント近く上がっており、2015・2016年と比べても6ポイントほど上回ったことになる。
昨年3ポイント下がったことに対して、2016年と2017年の調査の間に何があったのかを去年の当ブログ記事で考察していたが、今年の上昇は、その考察を吹っ飛ばすほどの要因が働いたことになる。
残念ながら、読売新聞の記事では、この回答率の上昇について、何の言及もしていない。
毎年の調査方法を見比べても、標本数、抽出方法、郵送法は共通であり、対象時期(月日)に多少ずれがあるものの、この違いを説明できるだけの要因は見つけることはできない。
記事からは原因がわからないので、こちらで想像するしかないが、すぐに思いつくのは、謝礼の効果だ。
ここからは、予想でしかないが、10ポイントも数字を上げた理由が謝礼の増加だったとしたら、経年変化にも歪みが生じる。つまり謝礼が増加したことによって回答率が増えたのだとしたら、昨年までの調査と比べて「謝礼が増えたことで回答に参加した」という人の答えが影響を及ぼし、昨年までの経年変化との比較で歪みが生じる可能性が出てくるからだ。
皮肉なことだが、「有効回答数が増えた」という、一見、喜ばしい結果も、定期的調査での貴重な財産ともいえる経年比較に、歪みを生じる要因になりかねないのである。
3.やっぱりすごい読売新聞の新聞週間世論調査
ただでさえ大量の資金を必要とする全国調査で、さらに謝礼金額を上げて有効回答数を上げていながら、そのせいで経年変化による調査結果に歪みを生じさせていたのだとしたら、「やっぱり読売新聞はすごい」との言葉を贈らざるを得ない。
そこで、実際にどう影響しているのか、経年比較できる質問項目を、2017年と2018年で比べてみた。
その結果は、
ほとんど変化なし
だった。びっくりするぐらい、変化はなかった。もちろん数ポイントの誤差はあり、記事の表記自体が四捨五入されているので、細かい違いまではカバーできないが、明らかな変化というのは見つけられなかった。
例えば、記事の一つ目に取り上げられている質問項目の2017年と2018年の数字の比較は、
◆あなたは、新聞があなたの必要とする情報や日常生活に役立つ情報を提供していると思いますか、そうは思いませんか。
・十分に提供している 9 → 9
・だいたい提供している 69 → 68
・あまり提供していない 18 → 19
・ほとんど提供していない 3 → 3
・答えない 2 → 1
[上記のYOMIURI ONLINEの郵送全国世論調査「新聞週間」の2017年と2018年の記事より質問と質問項目を一部抜粋。数字は前者が2017年調査、後者が2018年調査の結果を抜き出したもの。小数点以下は四捨五入で、合計100%にならないこともある]
であり、目立った変化は見られない。以下もこの調子で、経年比較できる質問項目の回答結果は、ほとんど変化がない。さらに、
◆あなたは、全体として、新聞の報道を信頼できますか、信頼できませんか。
[同上]
の質問では、5種類ある回答の数値が2017年と2018年とで(四捨五入で多少のばらつきはあるにしても)すべて変化なく一致しているという驚きの結果だった。
さすがに複数回答が可能な質問には、ある程度のばらつきがみられたが、それでもそこに意味を見出すほどの大きな違いはなかった。
もし、「この結果を元に記事を書け」と言われたなら、途方に暮れるだろう。「変化なし」というのも貴重な情報であるが、話はそこから膨らまないし、人々をひきつけるニュースにもならない。
はじめに感じた、読売の記事に対する「しんどさ」の原因はこれだったかもしれない。
もちろん、有効回答数が大きく増えたことで、存在していた変化が相殺されて見えなくなった可能性はゼロではない。その場合は、有効回答が増えた要因とその変化を相殺した要因の相関関係が分析対象になるが、これは、来年度以降の調査を見てみないと、判断できない。
逆に、来年度以降の調査でも変化がなければ、一定数以上は有効回答数を増やしても結果に大差はないという、統計学の常識を裏付けるものになる。
これがもし、先に予想したように、謝礼を増額して有効回答数を増やして得られた結果だとしたら、
「変化なし」という結果を、大金を投じて、わざわざ確認した読売新聞はすごい
と言わざるを得ない。
しかも、その大金を投じて得られた証拠である有効回答数の増加について、
一言も記事で触れない読売新聞はやっぱりすごいなあ。
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