「桜を見る会」から学ぶ行政文書管理―3.ガイドラインよる決まり

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《以上広告アナウンスでした。以下本文》

「桜を見る会」から学ぶ行政文書管理―2.施行令による決まり からの続き

一般的に、法律・施行令で定めたことを補足したものが訓令であるが、より詳しく具体的な指針を示したものとして、「ガイドライン」と表現されることが多い。

公文書管理法・公文書管理法施行令においてのガイドラインは、

行政文書の管理に関するガイドライン(ガイドライン)

がそれにあたる。

今回は、「行政文書の管理に関するガイドライン」について説明する。

「桜を見る会」から学ぶ行政文書管理―2.施行令による決まり からの続き

公文書管理における法律・施行令・ガイドライン等の関係

「法律」公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)
 ↓
「政令」公文書等の管理に関する法律施行令(公文書法施行令)
 ↓
「訓令」行政文書の管理に関するガイドライン(ガイドライン)

[当ブログ記事”「桜を見る会」北村公文書管理担当大臣が答弁に詰まった(2020/02/07)理由を解説”を参照]

行政文書の管理に関するガイドラインによる決まり

公文書管理法では、各行政機関の長は、「行政文書の管理に関する定め(以下「行政文書管理規則」という。)を設けなければならない」としている。(公文書管理法第十条第一項)

さらに、公文書管理法で「その他政令で定める事項」と示された項目は、公文書管理法施行令で列挙してあり、これらも含めて、各行政機関は、行政文書管理規則を設けなければならない。

各行政機関が、行政文書管理規則を設けるにあたって、指針となるのが、

行政文書の管理に関するガイドライン

行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定;令和元年5月1日一部改正)[PDF形式:1031KB]。(参照2020-04-24)

である。

補足:ガイドラインは、行政文書管理規則のひな型というべき枠組みを示し、具体的な留意事項を述べることで、各行政機関が規則を作成するにあたっての指針となる。各省庁でそれぞれ策定した行政文書管理規則が大枠で似通っているのは、このガイドラインに従ったものであるからだ。一方、各省庁で恣意的な差が出て問題となっているのが、行政文書の分類・保存期間の扱いである「保存期間表」であり、これは各課の文書管理責任者によって作成されている。

以下は、行政文書管理規則を作成するのにあたっての、具体的な事項を中心に取り上げていきたい。

「第2 管理体制」

行政文書管理規則では、管理責任者などを置くことを定めることになっている。

表でまとめると、

管理役職担当役職備考
総括文書管理者官房長・○○省に1名を置く
公文書監理官公文書監理官・大臣官房に置く
・CRO(Chief Record Officer の略)
・担当室(「公文書監理官室」等)を置 く
副総括文書管理者○○課長・文書管理の専門部署の課長を充 てることを原則
文書管理者具体的には、各課長(参事官、室長を含む)・総括文書管理者が指名
・所掌事務に関する文書管理の実施責任者
文書管理担当者補佐級の職員など・文書管理者が指名
監査責任者○○課長・○○省に監査責任者1名を置く
・公文書監理官室等の課長を充てることを原則
職員・法令及び文書管理者等の指示に従い、行政文書を適正に管理しなければならない
・国家公務員法第82条、刑法第258条を踏まえ、職員は文書管理を行う必要がある

ガイドライン[同上、p5-9(PDFページ6-10)]からの個人的なまとめ。
一部省略や、原文を変更したものがあります。
作成:2020/04/24

上位の三つの「総括文書管理者」・「公文書監理官」・「副総括文書管理者」が、各行政機関における全体的な行政文書管理の責任者になる。

「文書管理者」・「文書管理担当者」は、個別の行政文書の実質的な管理・担当者になる。

「監査責任者」が監査の責任者であり、原則、公文書監理官室等の課長を充てることになっている。

そして、すべての「職員」は、法令と文書責任者の指示に従い、行政文書を適正に管理する義務を負い、それに違反したり怠った場合は、懲戒処分の対象となり、また、公用文書等毀棄罪が規定されていることを踏まえておくことを、明示されている。

補足:副総括文書管理者は、「文書管理の専門部署の課長を充てることを原則」とされているが、私が確認した限りでは、多くの行政機関では、総務課長が充てられることがほとんどであるようだ。

「第3 作成」「1 文書主義の原則 」

公文書管理法においては、「文書を作成しなければならない」(公文書管理法第四条)とされ、ガイドラインでも、

(前略)、行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義の原則を明確にしている。

同上、p10、PDFページ11。(参照2020-04-24)

と、

文書主義の原則

を明示してある。

補足:(近代)官僚制の特徴の一つが「文書主義」であり、「文書主義の原則」と明記することは、当たり前と言えば当たり前なのだが、昨今の状況下では、この「当たり前」をいくら強調しても、し過ぎることは無いだろう。

「第4 整理」

職員は、作成・取得した行政文書について、分類し名称を付け、保存期間を決めるなどの、行政文書の整理を行わなければならない。

ガイドラインでは、分類やファイルにまとめる方法、名称の付け方、保存期間表の作成・設定などについて、注意点や指針を示している。

補足:起算日についても、この章で示されている。「桜を見る会」での起算日についての議論は、当ブログ記事”「桜を見る会」2020/01/22ブログで指摘した「起算日」の誤解点について”他を参照。

「第6 行政文書ファイル管理簿」

行政文書ファイル等の管理を適切に行うため、各行政機関では、法律・施行令に従って、「行政文書ファイル管理簿」を作成することが決められている。(公文書管理法第7条、同施行令第11条、12条、13条)

行政文書ファイル管理簿は、行政文書の目録の役割を果たすこととなり、公表を義務付けられている。

ガイドラインでは、施行令で具体的に示した内容に加え、

・インターネットで公表
・原則的には、年度末時点の行政文書ファイル等を確認し、行政文書ファイル管理簿に確定させる
・各項目には個人名や不開示情報を含むおそれのある名称を使用しない

などの注意点が書かれている。

補足:行政文書ファイル管理簿に記載すべき項目については、
公文書管理法では6項目+その他(同7条)、
施行令では11項目(同11条)、
ガイドラインでは12項目+備考(同、p37、PDFページ38)
と、より細かくなっている。(施行令とガイドラインの項目の差は、分類を大分類と中分類に分けたことによるもの)

「別表第1 行政文書の保存期間基準」・「別表第2 保存期間満了時の措置の設定基準」

ガイドラインの文末には、別表が二つ付いており、

行政文書の分類と保存期間の基準
保存期間が満了になった時の措置(廃棄、移管など)についての基準

を表にしている。(ガイドライン、P60-94、PDFページ61-95)

各行政機関は、この表を参考にして、それぞれの保存期間表などを作成することとなる。

補足:「保存期間表」については、
施行令では三十三項目(同別表)、
ガイドラインでは二十二項目(同別表第1)
にまとめられており、さらに、各課で作成される保存期間表も項目数が異なる場合が多いため、混乱が起きやすくなっている。(この点については、当ブログ記事”「桜を見る会」北村公文書管理担当大臣が答弁に詰まった(2020/02/07)理由を解説”ほかを参照。)

まとめ

「行政文書の管理に関するガイドライン」では、以上で取り上げたこと以外にも、様々な点で、具体的な指針を出している。

各行政機関は、法律・施行令に則った上で、ガイドラインの方針に従い、それぞれの行政文書管理規則を作成し、さらに各課が保存期間表を作成し、行政文書ファイルを作成・分類し、保存・管理していくこととなる。

次回は、

行政文書を登録する作業についての具体的な流れ

について説明したい。(予定)


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