「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(後半)―内容の考察

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架空小説「仮名手本森友学園」

「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(前半)―要点の整理からの続き。

前回記事では、会計検査院報告「その後の検査について」について、要点をまとめたが、今回記事ではそのまとめを踏まえて、考察を試みたい。

会計検査院、”「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について”、平成30年11月22日。

http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/301206_sonogo_01.pdf会計検査院ホームぺージにて、2018/12/06公開。(参照2018-12-23)

[公開:2018/12/23]

1.会計検査院「その後の検査について」の感想

読み終わったときの率直な印象は、

結論ありき

だった。

個々の記述においては、新たに分かった資料を基に、簡潔にまとめ、要点をうまくまとめている、と感心するところも多々あった。また、公表された資料だけではわからなかった細かな時系列も、会計検査院による当事者への聞き取り調査等によって、整理されていることが読み取れて、新情報を得ることもできた。

ところが、そこから導かれる結論は、

「影響を及ぼしかねない」、「一定の合理性」、「妥当性を欠くとは言えない」、「認められなかった」、「確認できなかった」、「確定することができなかった」

などの、判断を避けるものばかりだった。

そして、明白に「違反」と認定した行為も、「改めて懲戒処分の要求を行わない」という結論になっていた。

結論ありきのため、説明と結果の間に断絶があるように思えた。

要点をまとめた人と、結論を書いた人が、まるで別人のように、一つの報告書の中に存在するかのようだ。

ただ、逆に言うと、結論から見れば、報告の記述の意図が浮かんでくることもある。

そこで、結論から逆算して今回の報告を書きあげたと仮定し、分析してみる。

2.結論ありきからの逆算

通常の報告書なら、理由を説明し、そこから論理的な結論を導くことで説得力を持つものになる。ところが今回の追加報告は、説明と結論に飛躍があり、説得力の欠ける印象だ。

だが、今回の報告を、

結論ありき

と仮定し、ここから逆算していけば、今回の報告の組み立ての意図が分かりやすい。

会計検査院の追加報告の結論は、「改めて処分を行わない」というものだった。

その結論を導くために用意されたのが、大枠として、

疑問点には明確な判断を下さない」と「明確な違反にも新たな処分を加えない

という方針だ。

疑問点には明確な判断を下さない」という方針は、

  • 「適切とは認められない」
  • 「○○していれば、」
  • 「確定できなかった」
  • 「慎重を期すべきであった」
  • 「影響を及ぼしかねない」

といった文言で表されていて、そこから先は、会計検査院による判断を停止している。いくつかの点で、会計検査院は、財務省の言い分と工事業者や国交省の言い分との食い違いを指摘しているものの、結論を出していない。食い違う点に関して、検証可能な手段をすべて考慮して調査をするわけでもなく、提出された資料・証言だけで判断し、それ以上の追及を止めている。他にも、「適切と認められない」と言いながら、それに対して責任を追及せず、何の処分を下していない。これでは、会計検査院はこの報告で、ただ単に感想を言っているだけのようなものだ。

明確な違反にも新たな処分を加えない」という方針は、

  • 「既に退職していて懲戒処分の要求の対象外」
  • 「既に本件事態について任命権者から懲戒処分を受けていたりなどしている」

といった文言で表されている。ここで対象になるのは、先に述べた「疑問点には明確な判断を下さない」方針では対応できないほどの、言い逃れできない違反の場合だ。この場合、会計検査院は、まず違反を認めた上で、新たな処分を加えることができないとしている。それが、既に退職している、または、既に処分を受けている、という理由である。

以上の二つの方針によって、「改めて処分を行わない」という結論が支えられている。

3.「疑問点に明確な判断を下さない」という方針

前回の会計検査院報告では、経緯を裏付ける書類が残っておらず、適正かどうかを判断できない、というまとめだった。

今回、新たに応接記録等が出てきたが、注意したいのは、これは、財務省が、「一方的に」記録したものであるということだ。(今回の報告でも、会計検査院が「<はじめに>」でこのことを指摘しており、また、皮肉なことにこの問題では、財務省の役人自身が、自らの記録ではない業者による打合せ記録や音声データなどに対して、「相手方が一方的」と繰り返し表現し、信頼性に疑問を表明してきた。)
財務省は応接記録の提出に応じずに廃棄したと嘘をついており、これが都合の悪いものであったことには間違いないが、だからと言って、公開されたから正確で公正であるという保証はない。改ざんをする組織が信用できるはずもなく、さらに隠している可能性が高いとみられても文句は言えない。

それでも、交渉記録等が出てきたことにより、明らかになった面もあるが、報告では、それに対する財務省の弁解を載せているだけで、会計検査院による反論は、ほとんど見られない。

今回の報告では、財務省の言い分が、他組織の言い分と食い違うところが2件あった。「平成27年9月4日打合せ」と「見積もり増額依頼」だ。前者は、工事業者の証言、前者は国土交通省大阪航空局の役人の証言、がそれぞれ、財務省の証言と異なる点があった。その点について、会計検査院は、

食い違いを解消できなかった。

同上。原稿ページ22、PDFページ27。

発言に関する食い違いを解消することができず、増額依頼に関
する発言が行われたかどうかを確定することができなかった。

同上。原稿ページ40、PDFページ45。

と、述べるだけで、どちらが正しいかの判定を下さなかった。

結果的に、財務省が「一方的に」記録していた応接録が公表されて、財務省の言い分が垂れ流されただけで、会計検査院は、先の報告の結果から一歩も先に踏み込まなかったことになる。

4.本省理財局が係わっていることの指摘と、本省理財局に責任を問わないことのアンバランスさ

今回の報告では、経緯の説明と結論の間に分裂が見られるが、その多くは、

本省理財局がかかわっているという記述」と「本省理財局に責任を問わないという結果

によるアンバランスさにある。

報告では、貸付の経緯について、新たに公開された応接録等を考慮に入れて再検査しているが、その一つ、「本省相談メモ」を取り上げ、表付きで整理しており、注釈で、

注(1) 「本省相談メモ」は、審理室が作成したものである。
注(2) 理財局は、平成26年5月23日付けのメモについて、理財局国有財産業務課長の了解を得たものであるとしている。

同上。原稿ページ17、PDFページ22

と、わざわざ、指摘している。この注釈については、「本省相談メモ」を読んだ人にはすぐに気づく点ではある(例えば、当ブログ記事「森友問題」で今日分かったことのまとめと考察(2018/09/21))が、結果的に報告では本省理財局の責任を追及していないので、この記述が不自然に見えてしまう。

その後の経緯について、報告のまとめでは、

一方、近畿財務局の判断の結果、大阪府私立学校審議会による小学校設置の認可が受けられなくなることは適当でないなどとして審査期限の方針変更を行ったとする理財局の説明には、一定の合理性が認められる。

同上。原稿ページ18、PDFページ23

となっている。一つの文に、複数の文を入れ込んでいるので、一見するとわかりにくいかもしれない。そこで、この文章を大まかに分けると、

  • 「一定の合理性が認められる」と判断しているのは会計検査院
  • 「説明」したのは理財局
  • 「方針変更を行った」のは近畿財務局の判断の結果

ということになる。つまり、理財局自身は、貸付の件については、近畿財務局の判断だとして、本省が係わっていたとは言っていないし、会計検査院もそのことに触れずに、「一定の合理性がある」と説明を受け入れている。「本省相談メモ」の記述では注釈を入れてまで、本省理財局の係わりを指摘していたのにもかかわらずだ。これが、今回の報告に見られる、経緯の説明と結果のアンバランスさ、の一つである。

ほかには、「国の法的責任等の検討状況」において、近畿財務局及び大阪航空局の態勢について記述し、近畿財務局の対応状況についての箇所で、

なお、各財務局において解決が困難な国有地処分に係る相談は、審理室において対応する体制を執っており、審理室は、必要に応じて、理財局において法律顧問契約を結んでいる外部弁護士に、法律相談を行っている。

同上。原稿ページ44、PDFページ49。

と、本省審理室の法的対応状況を、わざわざ付け加えている。この法律相談の件では、公開されたものが、すべて近畿財務局のものであり[同上。図表3。原稿ページ8、PDFページ13。]、本省のものが公開されていないことを考えれば、本省審理室への言及は、不自然に見えてしまう。

ここでも、先の例と同様に、経緯の説明において本省の係わりを言及しておきながら、結果において本省の係わりについて言及しないものになっている。

これが、今回の報告の特徴だと言えるだろう。

5.財務省職員による航空局文書の差し替え作業の記述の複雑さ

今回の報告は、説明と結果に断絶があるように感じて読み進めにくい点が多かったが、その中でも、一番読みにくかった箇所が、

貸付決議書の内容が近畿財務局から提出されたものと航空局から提出されたものとで異なっている

同上。原稿ページ3、PDFページ8。

と経緯が書かれた箇所だ。

会計検査院にしてみれば、異なっていることに気付きながらも改ざんを見抜けなかったところなので、その釈明には、文字数が多くなるところではあるだろう。実際、この件は、3ページ以上にわたって図表入りで説明がされている[原稿ページ2の最後の1行から6ページの8行目まで]。

ただ、文字数が多いから読みにくかったということではなく、時系列の説明が分かりにくいものになっているため、理解するのに苦労した。

この説明が分かりにくいのは、国交省側が警戒した理由が

大阪航空局が近畿財務局から提出を受けた貸付決議書の一部の写しに別途の最終版があることを審理室から聞かされていた

同上。原稿ページ5、PDFページ10。

としたところである。

不自然なのは、審理室自身が「最終版は別」と事前に航空局に伝えていたことである。というのも、普通に考えれば、最終版が別にあると説明してしまった後に、差し替えて同じものになっていたとしたら、それはそれで問題になるからだ。

結果的に、差し替えた文書は提出されず、異なったままだったが、最終版は別にあるという財務省の言い訳で、会計検査院の目をすり抜けることには成功している。

それを考えれば、最終版は別にある、という言い訳をずっと前に考え付き、それを航空局に伝えておきながら、その後に、大阪航空局にある行政文書の差し替えを行うのは、無意味な行為で、デメリットしかない。

この件で、会計検査院は多くの文字数を割いているが、なぜこんな無意味な行為をしたのかに対する説明はない。

さらにこの件で、あらためて気づいたが、会計検査院は、財務省の「最終版前のドラフト」という言い訳があったにしろ、経緯の書かれた(改ざん前の)決裁文書を見ていたわけであり、そこには、ある程度のまとめられた経緯が載っていたのにもかかわらず、去年の報告書では言及していない。その意味では、会計検査院は、改ざんが公表される前から一定程度の経緯を知りえた立場にあり、改ざんが公表されたからと言って、昨年の報告結果を変えることは、保身を考えて、できにくかったともいえる。

(ただ、この件では、私もあまり、会計検査院を責められない。というのも、この経緯は、先の財務省の改ざん報告書に既に記されていながら、私は気づいておらず、今回、検査院の報告を読んで初めて気づいたからだ。逆に言えば、会計検査院の分かりにくい書き方が、財務省の改ざん報告書で見落としていた不自然な記述を、見つけさせてくれた。)

さらに、近畿財務局が同省大阪航空局に共有した文書は最終版でないことを伝達した上で、

財務省、”森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書”、平成30年6月4日。原稿ページ32、PDFページ35。https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.html(参照2018-12-23)

そして、国交省まで出向いて差し替えを行ったこの行為について、報告が奇妙なのは、指示を行ったものが誰なのかが、分からないようにしていることである。報告では、審理室で対応しており、国交省に出向いて差し替えた後、会計検査院の問合せがあってから、理財局総務課長及び国有財産企画課長に相談したことになっている。この書き方だと、誰が指示したかは曖昧にしているが、総務課長と国有財産企画課長は指示せずに後で知った、ということを強調したい、という意図が見える。この件では、誰が指示をしたのかを明確にするとともに、総務課長と国有財産企画課長が、事前に関わっていたかどうかについては、確認が必要であろう。
[肩書は当時。以下同。]

6.抜け落ちた懲戒処分対象者の不可解

報告では最後に、懲戒処分の要求の再検討を行っていて、結局、処分の要求は行わないという結論になっている。

ところが、この報告での、最大の疑問点であり、不可解な点は、違反をした対象者を、

そこで、本件事態に関与した会計事務職員について確認したところ、理財局では理財局長が、近畿財務局では管財部長、管財部次長及び統括国有財産管理官が、それぞれ該当していた。

会計検査院、”同”。原稿ページ57、PDFページ62。

として、本省理財局の違反者を、理財局長のみに絞っていることである。

財務省の改ざん報告書では、理財局長は明確な指示を出しておらず、「廃棄するように指示された」と受け止めて実際に指示を出したのは総務課長であり、実際に改ざんを指揮したのは国有財産審理室長と国有財産企画課長であるとしている。

この理屈、「明確な指示を出していない」「指示されたと思った」、ことを基にして、財務省の処分は、すでに退職していた理財局長に対し3か月の懲戒処分で、実際に指示を出した総務課長に対しては1ヶ月の懲戒処分、という、「公文書改ざん」という歴史的犯罪にしては軽い処罰になっていた。

今回の会計検査院報告では、ほぼ同様に財務省の言い分をなぞっているが、方向性を決定づけたものとして理財局長の責任をより大きく認定し、実際に改ざんの指示を出し指揮をした本省職員に対し、処分の検討すら避けた。

そして、責任を問われた理財局長は、「既に退職している」という理由で、追加処分を問われなかった。同時に、「まだ在職している」本省職員は、新たな処分の検討を逃れることになった。

7.「結論ありき」の結論

ここで振り返って見ると、

「改めて処分を行わない」

という結論は、財務省本省の責任を、すでに退職している元理財局長に押し付けることで成り立っていることが分かる。

そうなるとネックになるのが、「現在も在職している本省理財局の役人」の責任だ。在職しているため、処分を行うことは可能だからだ。

だが、検査院は、処分の検討の際に、本省理財局の職員を、対象に加えなかった。結論ありきであったことがうかがえる。

報告書には、このように責任を曖昧にするようにはっきりと記述していないこともあれば、責任を回避するためにわざわざ記述したところがあるため、全体として意図が分かりにくくなっている。

そこで、「結論ありき」として

  • 結論ありきのため記述しなかったこと
  • 結論ありきのため記述しながら無視したこと
  • 結論ありきのため記述したこと

の3種類に分類してみれば、今回の報告の意図が見えてくる。

例えば、財務省による航空局文書差し替え事件について、会計検査院が責任を曖昧にしてはっきりと記述しなかったことと、総務課長及び国有財産企画課長が事後報告を受けたかのようにわざわざ記述したのは、「記述する・しない」の方向は互いに逆だが、「結論ありき」という方針では一致している。

また、本省相談メモと相談記録について、本省理財局の係わりを言及しながら、結果において無視していることは、初めから結論ありきだったとみられても仕方がないだろう。(ただ、この、全体から見れば不自然な記述を消さずになぜ残したかは不明である。「ガス抜き」、「一応、触れて置いたとのアリバイ作りのため」、「結論ありきの検査院でははっきり言えないけどここが問題だとの暗黙のアピール」、など、いろいろと想像できるが。)

最後に感想

以上、会計検査院による「その後の検査について」について考察を加えた。

全体を通しての報告の印象は、与えられた材料から、結論ありきの結論に誘導・整理する技術はあるが、真相を解明する努力・能力に欠ける、というものだ。(個人の感想です)。

例えば、「深さ3.8mまでごみが混入しているとの虚偽の報告」の件についても、近畿財務局と工事事業者に聞いているが、両者が否定して、財務省の記録にも類推させる記録がなかったとして、そこで追及は終わっている。だが、既に公開済みの口裏合わせの音声データやメモがあることには言及していない。また、財務省の応接記録でも、2016年4月5日に工事業者が、「それほど深くまでは無理。3m程度が限度」[https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180523p-4.pdf原稿ページ862、PDFページ123。]と答えていることの整合性が取れていない。これでは、真相解明など期待できない。

「審査している側が、その審査結果によって審査される側に回っている」ように、今回の検査報告は、ある意味、検査院が検査された。不適切との認定を下さざるを得ないだろう。

ここで一つ提案だが、合同ヒアリングでは、財務省・国交省・会計検査院の三者を呼んでいることが多いようなので、財務省と国交省で食い違っている問題に対して、それぞれ弁明させ、その場で会計検査院に判定させる方が、効率的のように思える。その方が、検査院も責任をもって答えることができるのではないか。

森友問題は、まだ結論が出ていない。

更なる情報に期待したい。

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