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《以上広告アナウンスでした。以下本文》
2019年8月9日、大阪地検特捜部は、森友問題で、先に検察審査会で不起訴不当と議決され再捜査していた被疑者らを、全員不起訴処分とした。これにより、特捜部による捜査は、この問題の解決になんら資することなく、終了した。
森友問題、佐川氏ら10人再び不起訴 特捜部捜査終結
朝日新聞デジタル、多鹿ちなみ、細見卓司、”同上”、2019年8月9日16時10分。https://www.asahi.com/articles/ASM8274ZNM82PTIL030.html(参照2019-08-18)
そしてその捜査終結に応じるように、2019年8月16日、改ざんで「中核的な役割」を担った元総務課長が、駐英公使に充てられるとの人事が発表された。
森友関与の財務省幹部が駐英公使
REUTERS、共同通信、”同上”、2019年8月16日 / 00:13。https://jp.reuters.com/article/idJP2019081501001770(参照2019-08-18)
この元総務課長については、当ブログでも1年ほど前に考察し、この問題の重要人物であることが分かって、驚かされている。[「森友問題」元総務課長の考察(2018/08/06)]
だが、今回の一連の行政措置で、大阪地検の捜査結果が公開されず、また、海外への異動によって元総務課長の弁明機会を失わせるような結果になった。
ただ、その一方で、情報公開請求等での損害賠償請求裁判は継続しているものがあり、この元総務課長も証人申請をされている。まだ司法の場で弁明する機会は残されている。
そこで今回は、元総務課長へのこれまでの処分の結果と、まだ継続中の裁判を整理し、元総務課長に対する疑問点と、今後のどのように弁明するかを予想してみたい。
当記事での、年表と、捜査・調査結果についてのまとめについては、それぞれ、当ブログ記事、
「森友問題」元総務課長の考察(2018/08/06)
「森友問題」これまでの報告書等で言及された対象者とその処罰の整理(2019/04/07時点)
の内容に、最新の結果を付け加えたものです。
元総務課長の森友問題関連年表
2013/09/02 籠池→近畿財務局「土地取得要望書」提出
2014/07/09 人事異動「理財局国有財産企画課長」角田隆→中村稔
2015/02/04 特例承認の決済文書1(中村国有財産企画課課長 決済)
2015/04/30 特例承認の決済文書2(中村国有財産企画課課長 決済)
2015/05/28 貸付契約成立
2016/03/15 籠池夫妻→本省訪問(田村国有財産審理室長)
2016/06/17 人事異動「理財局総務課長」富山一成→中村稔
2016/06/20 売買契約成立
2016/06/22 人事異動「国有財産企画課長」中村稔→冨安泰一郎
2017/02/09 朝日新聞「価格非公表、近隣の1割か」
2017/02/17 安倍「かかわっていたら、国会議員も総理大臣も辞める」
2017/02/20 嶋田賢和国有財産企画課課長補佐→酒井弁護士「10日ほど隠れるように」
2017/02/21 国会議員団現地視察。田村国有財産審理室長も出張し同席「応接録は残されていない」
2017/02/22 菅官房長への説明(中江・菅・寺岡。佐川・太田・中村。平垣内・航空局総務課企画官)
2017/02/23 近畿財務局、応援の職員を呼び寄せた上で、政治家関係の記載箇所を確認作業
2017/02/24 佐川国会答弁「交渉記録というものはございませんでした」
2017/02/24 菅官房長「決裁文書にほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」
2017/02/26 日曜出勤して国有財産審理室長及び配下の職員が、国有財産企画課長に報告の上で決済文書改ざん作業。近畿財務局にも指示し、管財部次長及び統括国有財産管理官以下の職員が改ざん作業
2017/02/27 中村「今回の件は絶対大丈夫だから」(前田史郎朝日新聞論説委員の電話取材に)
2017/09/07 航空局長と理財局長との意見交換(太田・中村。蛯名・金井)
2017/00/00 宮本岳志議員、田村室長・中村総務課長から聞き取り
2018/03/02 朝日新聞「決済文書書き換えか」
2018/03/02 中村「我々が決裁文書として持っているものは、情報開示請求などに出しているものだけだ」(朝日新聞記事)
2018/03/02 野党合同ヒアリング(中村総務課長出席「お答えできない」→この日以降姿を消す)
2018/04/11 中村「責任はありますが、正直に言うと、そこまでちゃんと見ていなかったので、覚えてませんでした」(太田理財局長の国会答弁)
2018/05/31 大阪地検不起訴処分(全員)→検察審査会への申し立て
2018/06/04 財務省改ざん報告書発表(中村は停職1ヶ月の懲戒処分。大臣官房付けに異動)
2018/06/04 人事異動「理財局総務課長」中村稔→井口裕之
2018/07/27 財務省人事異動(中村は大臣官房参事官に)
2018/08/00 東京地検不起訴処分(佐川・中村)→検察審査会への申し立て
2019/01/11 東京第5検察審査会「不起訴相当」(佐川・中村)→不起訴
2019/03/15 大阪第一検察審査会「不起訴不当」(中村ら)→大阪地検再捜査
2019/07/05 人事異動(中村は大臣官房付けに異動)
2019/07/08 情報公開請求事件「訴えの変更申立。佐川・中村(既に申請済み)を証人申請」
2019/08/09 大阪地検不起訴(全員)→地検による捜査終結
2019/08/16 人事異動(中村は外務省に出向[在英国日本国大使館公使])
[敬称略。2019/08/20現在]
当ブログ記事、”「森友問題」元総務課長の考察(2018/08/06)”で作成した年表に、その後の人事異動や、追加の情報を付け加えたもの。
新たに追加した個別の日付ごとの情報についての参照先は、・「2017/09/07」
日本共産党中央委員会、”会見 2018.06.05 森友問題追及チームが記者会見で公開した内部文書”。
https://www.jcp.or.jp/web_info/html/post-8.html。
「PDF形式のファイル」、”航空局長と理財局長との意見交換概要(2017.9.7)”。https://www.jcp.or.jp/web_info/images/20170907_iken_kokan.pdf(参照2019-08-19)・「2018/08」「2019/01/11」
朝日新聞デジタル、”佐川氏ら不起訴、検察審が「相当」 改ざんは「非常に悪質」”、2019年1月26日05時00分。https://www.asahi.com/articles/DA3S13865438.html(有料会員限定記事。参照2019-08-19)・「2019/03/15」
国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会、”3月29日大阪検察審査会は森友問題で佐川らに不起訴不当決議が下記の通りでました。”、2019年3月29日 。http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/7702/(参照2019-08-19)・「2019/07/05」
財務省ホームページ、トップページ > 新着一覧 > 令和元年(2019年)新着情報:7月(https://www.mof.go.jp/whats_new/201907.htm)、
”人事異動(令和元年7月5日) (PDF:154KB)”、令和元年07月05日(金曜日)。https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/personnel/transfers/2019.07.05_24.pdf
(参照2019-08-19)・「2019/07/08」
国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会、”7月8日、国家賠償請求に変更する申立書を大阪地裁に提出”、2019年7月9日 。http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/7713/(参照2019-08-19)・「2019/08/09」
朝日新聞デジタル、多鹿ちなみ、細見卓司、”森友問題、佐川氏ら10人再び不起訴 特捜部捜査終結”、2019年8月9日16時10分。https://www.asahi.com/articles/ASM8274ZNM82PTIL030.html(参照2019-08-18)・「2019/08/16」
財務省ホームページ、トップページ > 新着一覧 > 令和元年(2019年)新着情報:8月(https://www.mof.go.jp/whats_new/201908.htm)、
”人事異動(令和元年8月16日) (PDF:40KB)”、令和元年08月16日(金曜日)。https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/personnel/transfers/2019.08.16_41.pdf
(参照2019-08-19)
「森友問題」における捜査・調査と報告書等リストと元総務課長への処分結果
捜査・調査機関 | 報告書等 | 元総務課長への処分 | |
2017/11/22 | 会計検査院 | 学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について | 無し |
2018/05/31 | 大阪地検特捜部 | (有印公文書変造・同行使、公用文書毀棄)不起訴 | 不起訴(嫌疑不十分) |
2018/06/04 | 財務省 | 森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書 | 停職・1月の懲戒処分 |
2018/08/00 | 東京地検特捜部 | (偽計業務妨害)不起訴 | 不起訴 |
2018/11/22 | 会計検査院 | 「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について | 無し(そもそも処分対象に含めず) |
2019/01/11 | 東京第五検察審査会 | (偽計業務妨害)不起訴処分の当否に関する審査事件 | 不起訴 |
2019/03/15 | 大阪第一検察審査会 | 有印公文書変造・同行使、公用文書毀棄事件の不起訴処分の当否に関する審査事件 | 不起訴不当 |
2019/08/09 | 大阪地検特捜部 | 不起訴 | 不起訴(嫌疑不十分) |
[敬称略。2019/08/20現在]
当ブログ記事、”「森友問題」これまでの報告書等で言及された対象者とその処罰の整理(2019/04/07時点)”でまとめた内容に、元総務課長への処分内容をピックアップして再整理し、その後の結果や新たな内容を付け加えたもの。
新たに追加した個別の日付ごとの情報についての参照先は、・「2018/08」「2019/01/11」
朝日新聞デジタル、”佐川氏ら不起訴、検察審が「相当」 改ざんは「非常に悪質」”、2019年1月26日05時00分。https://www.asahi.com/articles/DA3S13865438.html(有料会員限定記事。参照2019-08-20)
★阿修羅♪、投稿者 赤かぶ、”<東京地検>佐川元局長ら不起訴 審議妨害疑い 立証困難 <やはり、この国はおかしい💢💢>”、2018 年 8 月 17 日 15:00:05。http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/724.html(参照2019-08-20)・「2019/08/09」
朝日新聞デジタル、多鹿ちなみ、細見卓司、”森友問題、佐川氏ら10人再び不起訴 特捜部捜査終結”、2019年8月9日16時10分。https://www.asahi.com/articles/ASM8274ZNM82PTIL030.html(参照2019-08-20)
情報公開請求等の元総務課長関連の裁判
2017/03/02 上脇氏「森友学園と近畿財務局と面談、交渉記録」文書などの情報公開請求
2017/05/02 財務省は文書の存在を明らかにしないまま開示せず
2019/04/02 財務省は合計217件の交渉記録を開示
2019/07/08 上脇氏「正当な理由なく開示しなかった行為は、国家賠償法上、違法」として訴えの変更申立。[佐川・中村(既に申請済み)を証人申請]
[敬称略。2019/08/20現在]
国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会、”7月8日、国家賠償請求に変更する申立書を大阪地裁に提出”、2019年7月9日 。http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/7713/(参照2019-08-20)
同上、「訴えの変更申立書」、2019年7月8日。http://kokuyuuti-sinsoukaimei.com/wp-content/uploads/2019/07/訴えの変更申立書20190708.pdf(参照2019-08-20)
(感想)
戦前の日本軍は、日中戦争等で見られたように、出先の課長クラスが勝手に軍を動かし、上層部も黙認し、政府も国会も追認、マスコミも擁護し、多くの国民は熱狂して軍を支持した。そして、その後、多くの犠牲を生み、国の存亡の危機に陥りながらも、自ら戦争を止めることはできず、最後には「聖断」によってしか、敗戦を受け入れることができなかった。そして勝手に軍を動かし、日本を泥沼に引きずり込んだ課長クラスの人間の中には、責任を取ることなく戦後のうのうと生き抜いた連中もいた。日本の恥部ともいえる話である。
誤解を受けてほしくないが、「森友問題」も、戦前の日本と同様、「課長クラスが勝手に改ざんをした」と、私が思っているのではない。
だが、地検・会計検査院・財務省から出てきた(不十分な)捜査や調査結果からは、課長クラスの役割について、見方が割れている。
財務省の改ざん調査報告書では、局長が(決裁文書との認識をしないまま)「最低限の記載にすべき」と反応したことを、総務課長・審理室長・企画課長の課長クラスが「決裁文書の改ざんの指示」と受け止めて、改ざん作業に着手したことになっている。この意味では、「課長クラスが勝手に改ざんをした」と言えなくもない。だが、処分結果は、実際に改ざん指示をした課長クラスより(明確な指示を出していない)局長の方を重くするという矛盾が生じた。
当ブログ記事
「森友問題」「決裁文書の改ざん等に関する調査報告書について」(2018/06/04)等について(前編)―改ざん前経緯の考察
「森友問題」「決裁文書の改ざん等に関する調査報告書について」(2018/06/04)等について(後編)ー改ざん経緯の考察
一方、会計検査院は、改ざん発覚後に再び行われた検査において、課長クラスの責任に全く触れていない。本省理財局については、局長の責任だけを検討し、結果、退職済みとして追加処分無しとなっている。
(また、会計検査院は、最初の検査において、財務省から「公租公課の取扱い」について虚偽の説明を受けているが、その後の検査では全く触れていない。メモ「公租公課相当額の取扱いについて(考え方の整理)」が行われた当時、元総務課長は、企画課長であり業務課の肩書ももっていただけに、当人からこのメモの内容についての関わり具合の説明が求められる。)
当ブログ記事
「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(前半)―要点の整理
「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(後半)―内容の考察
「森友問題」会計検査院報告「その後の検査について」(2018/11/22)から抜け落ちた「公租公課」について
そして地検による捜査では、局長と課長クラスの証言の矛盾を解き明かすための強制捜査も行われず、任意で行われた内容も明らかにされないまま、終わった。
森友問題で新事実 特捜部と検察審査会に重大な“食い違い”
日刊ゲンダイDIGITAL、”同上”、公開日:2019/05/15 06:00
更新日:2019/05/15 06:00。https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/253823(参照2019-08-20)
これらの矛盾、
・実際に指示を出した源と認定しているのに処分内容を軽いものにした、財務省の矛盾
・本省課長クラスの責任を一切問わない会計検査院の矛盾
・強制捜査もせず嫌疑不十分とする地検の矛盾
これらを説明できる理由は一つしかない。
元総務課長は、(局長以外の)上からの改ざん指示を受けた
という疑いだ。
元総務課長は、改ざんが報道された当日の野党合同ヒアリングで「答えられない」との返答を連発した後、姿を見せなくなった。
そして、大阪地検の不起訴、さらに、海外への異動を命じられたことで、元総務課長は、刑事裁判等で自ら弁明する機会が失われた。これは元総務課長にとっても不幸なことである。
ただ、情報公開請求裁判で、元総務課長は、佐川氏と共に証人申請されているので、弁明する機会は残されている。この機会を活かすべきだろう。
このままでは、元総務課長は、改ざんの最終決定権者として、歴史に名を残すことになる。わずか数年の地位のために一生の汚名をかぶるのか、元総務課長の今後の態度が注目される。
過去の考察のカテゴリーはこちら→「森友問題」考察
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