2019/03/20読売朝刊の経済面の表が分かりにくすぎて、逆に分かりやすくてすごい

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この記事のこの場所に「この記事には広告が含まれます」という一文が目立つように書いてあります(ここはそういうところですよ?)
《以上広告アナウンスでした。以下本文》

読売の経済面と言えば、経済指標についてはすべて「アベノミクス」という魔法の言葉で説明する印象があり、ある意味で分かりやすい(個人の感想です)。

そんなわかりやすい記事が、2019/03/20(水)の読売朝刊の経済面でも、発見することができた。

一見すると、記事内にある表は分かりにくいが、よくよく読むと、一生懸命、アベノミクスに結び付けて説明しようとしていることが分かる。

分かりにくい表から分かりやすい意図が垣間見える、読売新聞はやっぱりすごい。(←わかりにくい)

2019/03/20(水)読売新聞朝刊経済面

今回取り上げるのは、19日発表の日銀の資金循環統計(速報)についての読売新聞の記事と、そこに貼られた表だ。

 現金 過去最高93兆円 個人金融資産

読売新聞、大阪本社版、2019年3月20日(水)。11面13S。
読売新聞、大阪本社版、”同上”の記事の表部分を撮影して切り抜いたもの。11面13S。(参照2019-03-20)。画像の汚さとこの表の分かりにくさは関係ありません(たぶん)。

記事タイトルは「過去最高」とあるので、「表の数字も増加しているんだろうな」と思って表の行の一つ目の項目を見ると、18年末が前年より減っている。

あれっ、と思って項目を見ると、「全体」になっていて、「一行目にいきなり全体?」と思いながらも、記事タイトルを見直すと「現金 過去最高」だったので、「ああ、現金をピックアップしたのか」と改めて表を見直す。

二つ目の項目が「現金・預金」だったので、「これをピックアップしたかったのか」と思って18年末を見ると確かに増加しているのが分かり、記事タイトルの通りだな、と思った。

だが、三つ目の項目を見ると、「現金」。「えっ、また?」と思ってさっきの項目を見ると「現金・預金」だったので、改めて預金を抜いて「現金」だけをピックアップしたようだった。

これが分かりにくいのは、

・比較する項目を、包含関係にある「全体」・「現金・預金」・「現金」で並列させている(「全体」⊃「現金・預金」⊃「現金」)
・記事では、「株式等」・「投資信託」の前年比減少に言及しているのに、表では項目を設けない

といった点だ。

つまり、「現金」だけをピックアップさせたければ、「現金・預金」の項目は重複した情報であり、不要だ。仮に、並列させたければ「現金」と「預金」にした方が、得られる情報の内容が同等である上に、同じレベルでの項目なので見やすい。

それなのに、なぜ、「現金」と「預金」を分けずに「現金・預金」にまとめたのか。

答えは簡単で、「預金」を単独にすると、「預金」の方が「現金」より桁が大きいため、「現金 過去最高」がかすんでしまうからだ。

この点では、表を作成した記者の苦心の跡がうかがえる。初めから「現金」のみの項目にしておけばよかったのに、スペースが余ったからか、さらに二つの項目をピックアップする必要があり、結果的に「全体」と「現金・預金」といった、包含関係にあるものを並列せざるを得なかったように見える。

「アベノミクス」の成果である「現金増加」が分かる表を作れとのことだ
→スペース上あと二つ項目を取り上げる必要があるな
→「預金」と並べると「現金」が霞んでしまうな
→よし、「預金・現金」でまとめてしまえ
→あとひとつ、同じレベルの項目「株式等」・「投資信託」を加えるか
→ダメだ、前年比で大きくマイナスになってるじゃないか、○○から叱られる
→「全体」でお茶を濁すか・・・(「全体」でも減少しているけど黙っておこう)

と言った心の動きが想像できる。

記事のタイトルのために、表をわざわざ見難くするかのような、読売新聞はやっぱりすごい。

次は時系列について。

表には、わざわざ、2012年末からの増加率を載せて、「アベノミクス開始以来の増加額(率)」と小さいスペースに長文を詰め込んでいる。

読売と言えば、経済指標についてはすべて「アベノミクス」という魔法の言葉で説明する

という言葉を思い起こさせるが、この表も12年末を基準にし、「アベノミクス」という便利な言葉で比較している。だが、17年末時点の結果は、1年前に分かっていたことで、そこから1年たった18年末の結果を、わざわざ、12年末から比べるのは、1年前に分かっていた過去の結果を強調して繰り返すだけで、この1年における変化を軽視する(見ないふりをする)ものだ。

むしろ、この一年で全体が減っていることを注視し、足元で何が起こっているのかを分析することが大事なのに、この記事は、「アベノミクス開始から比べれば増加している」と喧伝するのみ。

しかも、疑問なのは、昨日の夕刊では、個人が持つ残高全体が前年を下回ったことを言及しているのに、

個人が持つ残高全体は、前年比1・3%減の1830兆円。前年を下回るのは10四半期ぶり。

読売新聞オンライン、”個人金融資産 現金・預金 最高984兆円…昨年末 投資への流れ弱く”、2019/03/19 15:00。https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190319-OYT1T50208/(読書会員限定。参照2019-03-22)。[手元に夕刊がないため、同記事内容のオンラインニュースを引用。]

ところが、次の日の朝刊ではその点を記事で言及していない。夕刊より記事スペースは大きく、表まで載せているのにもかかわらずだ。

まるで、

昨日の夕刊では正直に書いたけど、朝刊では、都合の悪い部分は分かりにくいように書き直しました

と言っているかのようだ。(個人の感想です)。

思わず、

アベノミクス 真・三本の矢 「改ざん・隠蔽・統計」

昔、大本営発表。今、アベ政権発表。

のようなことを、統計数字からの表の作り方を見ると、つぶやかずにはいられない、読売新聞は、やっぱりすごい。

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