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《以上広告アナウンスでした。以下本文》
2020/02/07(金)衆議院予算委員会。
黒岩宇洋議員による質問に対し、北村誠吾大臣(公文書管理担当)は何度も答弁に窮し、繰り返し速記が止まった挙句、委員会は散会した。
この件は各メディアで報道されたものの、北村大臣がどの質問に対して窮したのかの詳しい内容についての解説は、私が見た限りでは見受けられなかった。ほとんどの報道では、これまでの経緯もあって、北村大臣の能力・資質をクローズアップするだけだったように思える。
そこで今回は、何度も速記が止まった北村大臣の答弁を振り返り、どの部分で食い違いと勘違いが生じたのかを、公文書管理の観点から整理・説明をしてみたい。
予算委員会(2020/02/07)でのやり取り
当日のやり取りは、衆議院TVインターネット審議中継のビデオライブラリで確認でき、黒岩議員の質問部分のリンクは以下の通り。
衆議院TVインターネット審議中継
衆議院TVインターネット審議中継、http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php(参照2020-02-29)
開会日:2020年2月7日 (金)
会議名:予算委員会(6時間13分)
説明・質疑者等(発言順):
(中略)
黒岩宇洋(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)
残念ながら、当日の国会会議録はまだ掲載されていない(2020/02/09現在の個人による検索結果)。
国会会議録検索システム
国会会議録検索システム、https://kokkai.ndl.go.jp/#/(参照2020-02-09)
よって、衆議院TVインターネット審議中継のビデオライブラリから、議論のやり取りの詳細(要約)を整理して、議論の流れを再現する。
注)個人による書き起こしのため、表現等に正確さが欠ける場合があります。また、発言内容の正確さを精査したものでもありません。
[黒岩議員と北村大臣のやり取りは、上記ビデオライブラリの5:56:00辺りから]
黒岩議員「桜を見る会の各省の推薦者名簿、保存期間がまちまち。妥当だと思われますか?」
北村大臣「責任を負う各省が保存期間を設定するのがルール。政令やガイドラインの別表の中で保存期間の標準的な基準を示している。別表に記載のないものは、各省が適切に設定することとし、一律に設定するのは困難。」
黒岩「公文書管理課は、桜を見る会の推薦名簿の保存期間を3年にしている。別表に記載のないものは、『別表を参酌する』と書いてある。では、別表のどの部分を参酌したのか?」
北村「課長の判断。別表の栄典等の10年とは性質が異なるが、保存の必要があると判断したため、別表を参酌する中で3年としたもの」
黒岩「別表のどの分類なのか教えてください」
速記を止めてください
北村大臣「全体の別表を参酌する中で3年とした」
黒岩「参酌するのは何のどの規定?」
速記を止めてください
北村「法律施行令2項3号、あえて申し上げれば17号の栄典に関するものが・・・(「何条?」との声)・・・8条の2項3号」
黒岩「そこには『別表の規定を参酌』とある。38分類(ママ)ある中のどの規定を参酌したのかお答えください」
北村「17号を参酌した」
黒岩「違いますよ。ホントに17号でいいんですか」
速記を止めてください
北村「17号に栄典の10年を参酌しつつ、公文書管理課の保存期間表上、3年、これを参酌した」
黒岩「事務方、ホントにいいんですか。大臣、別表の、33まである分類の内、第何分類ですか」
北村「8条2項3号のうち、17号は栄典に関するものであり、全体を勘案して3年とした」
黒岩「大臣、別表の17項、読んでください」
速記を止めてください、速記を起こしてください、速記を止めてください
北村「ただいま詳しく確認をしていますので、しばらくご猶予いただきたい」
速記を止めてください
北村「にじゅうは・・・せ・・・2条の政令の別表を斟酌(しんしゃく)したもの・・・政令の別表を斟酌したもの。先ほどは、公文書管理課の保存期間表の17号を申したものであり、正しくは、・・・2条・・・、政令2条28号であります」
黒岩「大臣、私の質問を聞いてください」
北村「先ほどは、公文書管理課の保存期間表の17号を述べたものであり、正しくは政令の別表28項であります」
黒岩「じゃあ、施行令の別表28を引いて、公文書管理課の保存期間表、どこを読んだんですか?」
北村「・・・17条・・・もとい、17項でございます」
黒岩「基本的なことがかみ合わない。事務方もあわてずに整理して欲しいと思います。いったん休憩にしましょう」(退席)
退席なさいませんよう。速記を止めてください。・・・この際、休憩にいたします。
注)以上は、個人的な書き起こしによる要旨のまとめで、発言の再現の正確さに欠ける場合があります。特に、条文の「号」(ごう)・「項」(こう)の部分は、発言者自身が理解せずに発言している可能性が高く、また明瞭な発言でもないため、内容についても発言の再現性についても、不正確であることをお断りしておきます。
問題となった「別表」とは?
上記の質問と答弁とすれ違いは、北村大臣の「別表」に対する勘違いから生じている。
黒岩議員が質問しているのは公文書施行令の「別表」についてだが、北村大臣は公文書管理課の保存期間表(別表)を基に答弁をしている。そのため、17項についてのすれ違いが生じている。
ここで、公文書管理の法令と、各省での具体的な規則について説明しておく。
一般に、法律による行政では、法律→政令→訓令という形でより具体的に内容を詰めていくことになるが、公文書管理では
「法律」公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)
↓
「政令」公文書等の管理に関する法律施行令(公文書法施行令)
↓
「訓令」行政文書の管理に関するガイドライン(ガイドライン)
という形になっている。
そして、公文書に関する法律・政令・ガイドラインに従い、各行政機関は、「行政文書管理規則」を作成し、各部局は「標準文書保存期間基準(保存期間表)」を作成することが決められている。
○○省行政文書管理規則
↓
○○省◇◇課標準文書保存期間基準(保存期間表)
この基本的な仕組みの下で、今回の保存期間に関しての別表について整理すると、
公文書管理法
↓
公文書法施行令→「別表 第八条関係」
↓
ガイドライン→「別表第1 行政文書の保存期間基準」
内閣府本府行政文書管理規則→「別表第1 行政文書の保存期間基準」
↓
大臣官房公文書管理課 標準文書保存期間基準(保存期間表)
となっている。
電子政府の総合窓口e-Gov、”公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)”、最終更新: 平成二十八年十一月二十八日公布(平成二十八年法律第八十九号)改正。施行日: 平成二十九年四月一日。https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=421AC0000000066(参照2020-02-09)
電子政府の総合窓口e-Gov、”公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年政令第二百五十号)”、施行日:平成二十八年一月一日、最終更新: 平成二十七年十二月十八日公布(平成二十七年政令第四百三十号)改正。https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=422CO0000000250。「別表 第八条関係」。(参照2020-02-09)
”行政文書の管理に関するガイドライン”、[平成 23 年4月1日 内閣総理大臣決定 令和元年 5 月1日 一部改正] 。 p60-82、PDFページ61-83。https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kanri-gl.pdf(参照2020-02-09)
”内閣府本府行政文書管理規則(PDF形式:763KB)(最終改正:平成31年3月29日)”。PDFページ13-41。https://www8.cao.go.jp/koukai/bunsyokanri_kisoku310329.pdf(参照2020-02-09)
”大臣官房公文書管理課 標準文書保存期間基準(保存期間表)”、平成30年4月1日から適用【令和元年11月15日改訂】。https://www8.cao.go.jp/koukai/pdf/06koubunsyo_hozon.pdf(参照2020-02-09)
つまり、黒岩議員は、「施行令の別表のどれに当たるのか」と質問しているのに、北村大臣は「(公文書管理課の保存期間表の)17項」と繰り返すのみだった。その後、何度もの中断をはさんだのちに、ようやく間違いに気づいて訂正するものの、(何度目かの)法律等における条・号・項の読み方をわかっていないことが露呈し、委員会は紛糾し、結局、休会になった。
公文書管理における事務方の問題
今回のことを、大臣の資質・能力の問題として片づけることも可能だ。(事実そうである。)
ただ、さらに深刻なのは、この食い違いを、事務方がすぐに訂正できなかったことだ。
今回の黒岩議員の質問予告や予定していた内容が分からないので、想定するしかないが、組み立てとしては、
「保存期間が各課で異なるのは問題ではないのか」
「例えば、公文書管理課では推薦名簿を3年としているが、その根拠は」
「人事課が名簿を1年未満にした根拠は?」
「施行令の8条2項3号が根拠であるなら、別表のどれを参酌したのか?」
というような形だったのではないだろうか。(予測)
なお、施行令の第八条第二項は、
第八条
同上、”公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年政令第二百五十号)”。「第八条第二項」。(参照2020-02-09)
(省略)
2 法第五条第一項の保存期間は、次の各号に掲げる行政文書の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間とする。
一 別表の上欄に掲げる行政文書(次号に掲げるものを除く。) 同表の下欄に掲げる期間
二 他の法律又はこれに基づく命令による保存期間の定めがある行政文書 当該法律又はこれに基づく命令で定める期間
三 前二号に掲げる行政文書以外のもの 別表の規定を参酌し、行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じて行政機関の長が定める期間
となっている。
質問で聞かれた「公文書管理課の推薦名簿の保存期間」だが、3年保存にしていることは、「大臣官房公文書管理課 標準文書保存期間基準(保存期間表)」に明記されてある。つまり、この質問に関しては、
「施行令第八条第二項第二号を根拠としてます」
と答えれば済む。
[2020/02/12打消し線:上記の点については、間違っていた可能性が高いので打ち消しておきます。改めて考えると、第二号に書かれている「他の法律又はこれに基づく命令」に、公文書法に基づく保存期間表は含まれないと解するべきだった。上記の点についてと、それに基づく以下の推論部分の一部については訂正します。]
予想だが、黒岩議員は、この答弁を受けた後に、
「では保存期間表に定めのない(ように改訂した)内閣府大臣官房人事課の推薦名簿は、第三号の『前二号に掲げる行政文書以外のもの』に当てはまることになり、この場合、『別表の規定を参酌』とあるが、人事課の推薦名簿はどれを参酌したのか?」
と議論を深めるつもりだったのではないだろうか。(予想)
ところが実際は、公文書管理課の推薦名簿が3年保存であることを聞かれたときに、北村大臣が、黒岩議員の質問につられて「参酌」と言ってしまったために、公文書管理課の推薦名簿も第三号に当てはまるものだと、勘違いし、大臣も事務方も混乱してしまったのだろう。施行令の別表について聞かれているのに、用意していた「公文書管理課の保存期間表」をその別表だと勘違いして、保存期間表の17項を読み続けたのだろう。
大臣の能力不足は明らかだが、公文書管理を担当する部署でありながらこれを正すことのできなかった事務方にも大いに問題があり、責任は大きい。
話はそれるが、今回の件で、大臣が何度も17項というので何を言っているのか、初めは見当もつかなかった。「17項」は、施行令の別表では「職員の人事に関する事項」、ガイドラインの別表では「独立行政法人等に関する事項」にそれぞれ該当するため、大臣の言う17項がなんなのかピンと来なかった。また、これまでの経験上、各課の保存期間表は、ガイドラインの別表を項目をそのまま活かしていると思い込んでいたので、公文書管理課の保存期間表の17項も「独立行政法人等に関する事項」だと思っていた。ところが、実際に公文書管理課の保存期間表を見ると、ガイドラインの別表から、業務に関係のない部分を省略した上で、項目番号を詰めて番号を付け直していた。その結果、ガイドラインでは「20項」の「栄典又は表彰に関する事項」が、公文書管理課の保存期間表では「17項」になっていた。(気になって、ランダムに各課の保存期間表を調べてみたが、番号を活かしている課と、番号を詰めている課の、両方あるらしかった)。公文書に関して各省庁との統一性を管理すべき公文書管理課が、その課でしか通用しない番号を割り振りなおしていたことには、不審感を覚えた。
大臣に問題があるのは言うまでもないが、公文書管理課の体制にも問題ありといわざるを得ない。
「桜」つながりで思い起こすのは、去年放送されたドラマ「同期のサクラ」だ。同ドラマでは、途中、主人公が、たしか「社史編纂室」といった名称の部署に異動されるが、物語上は、その部署に「左遷」という意味以上の役割は与えられていなかったように思える。
日本テレビ、”同期のサクラ”。
https://www.ntv.co.jp/sakura2019/(参照2020-02-09)
「桜を見る会」での対応を見る限り、残念ながら、公文書管理課も左遷場所のようなイメージが付いたことは否めない。
公文書管理は、民主主義を支える大切な仕事であるはずなのに、現状はそうはなっていない。
公文書管理に、ほこりも持って仕事をしてほしいものだ。
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