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《以上広告アナウンスでした。以下本文》
2019/02/14、立憲民主党の枝野代表が、ある集会の挨拶で述べた言葉が話題になった。
「日本の総理、小学6年生並みで情けない」立憲・枝野氏
朝日新聞デジタル、2019年2月14日15時24分。https://www.asahi.com/articles/ASM2G3SQDM2GUTFK00D.html(参照2019-02-18)
これに対し、賛否両方から意見が出たようだが、不思議なことに、
「日本の総理が小学6年生並み」
ということが事実かどうかについてを検証した記事は、寡聞にして、発見できなかった。
意見に賛同する側はもちろん、それに対し反対する側も、「発言が幼稚だ」などと言うだけで、それが事実かどうかについては争っていない。中には、「そんな小6並みに負ける野党」というように、「総理が小6並み」であることを認めたうえで反論している人もいるようだ。
「日本の総理が小学6年生並み」
ということが事実かどうかを、誰もチェックせずに論争をするのは由々しき事態だ。
そこで、「報道の自由」・「言論の自由」・「表現の自由」を守るいう使命感にからた初心者が、この点について「ファクトチェック」を試みた話をしたい。(←「ファクトチェックに成功した」とは言っていない)[肩書は当時]
発言内容の検証・ファクトチェック
まず発言の内容や、前後関係を確認する必要がある。
この手の問題でよくあるのが、「全文を読めばニュアンスが違う」と言いながら、当人は全文を読んでいないパターンだ。(例えば、「公開した議事録すべてを読めば潔白であることが明らかだ」、「4000ページの文書、読まれていないでしょうけど」等の発言をして、自分は読んでいないくせに相手も読んでいないと決めつけて反論を封じようとする幼稚な言い訳だ。←このこと自体で、今回の件の「ファクトチェック完了」としてもいいかもしれないが、これは幼児性というよりも人間性の問題なので、もう少し精査する)。
枝野氏の発言の内容や流れについて、上記の記事を参照させてもらうと、まず前文と言える部分が、
国会の状況は本当に目を覆うばかりだ。(森友学園をめぐる財務省の)公文書改ざんをはじめ、(厚生労働省の)毎月勤労統計(の不正調査問題)に至るまで、ウソとごまかしの政権、子どもじみた政権だと思う。
朝日新聞デジタル、同上。(参照2019-02-19)
まず、「公文書改ざん」、「毎月勤労統計(の不正調査問題)」といった事実をあげ、「ウソとごまかしの政権、子どもじみた政権だと思う」と感想を述べている。内容的には、「改ざん」「不正統計」という事実から「ウソとごまかし」と表現するのも正しい。次に、そこから「子どもじみた」とも言い換えている点だが、確かに、「子どもじみた」という表現に否定的なニュアンスが含まれているので、「ウソとごまかし」から「子どもじみた」と言い換えるのも、可能であろう。だが、先に述べたように、「ウソやごまかし」は幼児性というよりも人間性の問題を精査する必要があるので、もう少し説明が必要だ。
実際、枝野氏はそこからさらに説明をしている。
実は私、小学校6年の男の子を子育て中だ。だいたい想像つくと思うが、小学校6年のやんちゃな男の子に向かって感じること、言っていること。「ひとのせいにするな」、「感情的にむきになるな」、「大きな声、変なところで出すな」。日本の総理大臣が小学校6年生並みだ。下手すると、うちの息子の方がまだましでないか。
朝日新聞デジタル、同上。(参照2019-02-19)
私の取材力では、枝野氏が「小学6年生の男の子を子育て中」であることを直接確認できなかったが、この点については、過去の報道や周辺情報から見ても、疑う必要はなく、事実だと推定できる。続けて、「だいたい想像つくかと思うが」と言って、「小学6年生のやんちゃな子供」に対して、感じ、言っている例として、3つ挙げている。その3つについては、個人的な感想による面も多いが、一般的に同意できることだ。そしてその3つについて、枝野氏は、安倍首相にもそれが当てはまると個人的な感想を持っているのだろう。それが前段の「子どもじみた」と表現した理由であり、枝野氏がそう感じた事実である。
個人的にも、この3つの点については、
- 「ひとのせいにするな」→部下が「総理案件」と言った事実に対し「報告をしなかった」ことにして自分の責任を回避
- 「感情的にむきになるな」→「首相も国会議員も辞める」発言
- 「大きな声、変なところで出すな」→「日教組!」等のヤジ
等、簡単に思い当たる所があったので、事実だと推論できる。事実、この三つの点を否定している意見は、私も見たことがない。
あと、問題になるのは、「小学6年生」という具体的なレベルに当てはまるかどうかだ。枝野氏は、自らの子育ての経験から、「小学6年生」というレベルをあてはめているため、個人的な感想である側面が強く、この件については検証が必要だろう。実際、枝野氏も、「下手すると、うちの息子の方がまだましでないか」と述べ、小学6年生以下である可能性も示唆している。
以上より、枝野氏が、「日本の総理が小学6年生並み」と感じたことは事実であるが、実際に、「日本の総理が小学6年生並み」かどうかについては、それ以下である可能性も含めて、更なる検証が必要だ。
追加検証
枝野氏の発言のみでは、「小学6年生並み」の「並み」がどれだけの上下を含むものかが絞り切れない。そこで、過去の安倍首相の経歴を確認したいところだが、残念ながら、私の取材力では、安倍首相の信頼のおける正確な学歴を直接確認できなかった。
そこで、過去の学歴ではなく、間近の実際の発言等から、学力を判定することにした。
この際、参考にするのは、「できた」ということではなく、「できなかった」事実である。そこで、「安倍首相 言い間違え」等の検索ワードで調べると、
安倍総理の酷い言い間違えが相次ぐ!「(沖縄の)地元の懸念を軽視する(正=軽減)」に「プライマリーバランスも改ざんさせている(正=改善)」
ゆるねとニュース、2018年1月28日。https://yuruneto.com/abe-godoku/(参照2019-02-20)
保育所を保健所 安倍首相の言い間違いの心理を学者分析
iRONNA、『NEWSポストセブン』、
2016/04/01 21:10。 https://ironna.jp/article/3069(参照2019-02-20)
安倍首相がまた「私は立法府の長」発言! たんなる言い間違いではない、三権分立を破壊する安倍政治の本質
LITERA、2016.05.19 07:09。https://lite-ra.com/2016/05/post-2257.html(参照2019-02-20)
安倍首相が国会答弁で「云々」を「でんでん」と読み大恥! 他にも中学生並みの言い間違い連発、その理由とは?
LITERA、2017.01.25 04:33。https://lite-ra.com/2017/01/post-2875.html(参照2019-02-20)
が、検索1ページ目にヒットした。(個人のパソコン環境における現時点での検索結果です)。
これらの間違えた漢字・用語が、どの学年で習うものかを調べることで、学力を判定する材料としたい。学力の基準としては、時代による変化があるので、今回は、新学習指導要領を基準とし、学力を判定することにする。
1.「軽減」を「軽視」と読み間違えた事例
漢字を習うのは
軽→小3年
減→小5年
視→小6年
(総評)「軽」は読めているので小学3年生の学力はあります。しかし、5年で習う「減」を読み間違えて6年で習う「視」と読んでしまったのは、6年生になって「視」の漢字を覚えたが5年生の時に覚えた「減」と混同してしまったのだと思います。よって、学力は5,6年と評価します。6年生になって覚える漢字が増えましたが、これまで学んだ漢字もしっかりと復習しましょう。
2.「保育所」を「保健所」と言い間違えた事例
漢字を習うのは
「保」→小5年
「育」「所」→小3年
「健」→小4年
(総評)5年生で習う「保」は読めているのに、3年生で習う「育」を4年生で習う「健」と読み間違えています。せっかく5年生の漢字を読めたのに4年生の漢字を読み間違えているので、学力は4年生の学期途中と評価します。学校にある保健室は、ニンベンのついた「健」なので「建」と間違えないように注意しよう。
3.「立法府の長」と発言した事例
教科「社会」では
「立法、行政、司法の三権がそれぞれの役割を果たしているのを理解すること」→小6年
(総評)我が国の政治の考え方と仕組みや働きは、6年生で習いますが、基礎を見直しましょう。「立法、行政、司法」はそれぞれ「国会、内閣、裁判所」に対応します。用語を知っているのに、根本を間違えているので、学力は6年生学期途中と評価します。三権分立を理解しない限り、憲法の授業へとは進めないので、きちんと復習しましょう。
4.「云々」を「でんでん」と読み間違えた事例
漢字を習うのは
「云」→小中学校では習いません
「伝」→4年
(総評)これは難しすぎましたね。「云」は小学校でも中学校でも習わない漢字でした。正解は「うんぬん」です。似た成り立ちの漢字「伝」を連想して、「でん」と読んだのでしょうが、不正解です。「伝」が読めたという意味では、学力は小学4年生以上と言えますが、「伝」と「云」の違いが判らなかったかもしれないので、学力は、4年生の学期途中と評価します。小学校で習わない漢字の場合もあるので、分からない場合は事前におうちの人や周りの詳しいお友達に確認しよう。
文部科学省、”平成29年改訂小学校学習指導要領(PDF:5622KB)”、平成29年3月告示、登録:平成29年04月。http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/05/1384661_4_3_2.pdf(参照2019-02-20)
学年別の漢字は、「学年別漢字配当表」p.42-45[PDFページ43-46]を参照。
立法、行政、司法については、p.58[PDFページ59]を参照。
以上の4つの事例を総合すると、
小学4年の学期途中から小学6年生の学期途中までの学力
であると、結論付けられる。
ファクトチェック結果
以上より、
「日本の総理が小学6年生並み」
というのは、許容される誤差を考えれば限りなく正解に近いと言っていいだろう。(しかも、枝野氏は「下手すると、うちの息子の方がまだましでないか」と言及しており、下方修正する必要も示唆していた。)
今回の件でファクトチェックが賛否両方のどちらからも起こらなかったのは、事実として受け入れられているためであると、改めて分かった。
今回、長々と検証したが、世間一般に「日本の総理が小学6年生並み」と認識されていることが、事実であると追認しただけに過ぎなかったようだ。
ただ、上で示した、学習指導要領では、教材として取り上げる観点として、
公正かつ適切に判断する能力や態度を育てるのに役立つこと。
文部科学省、同上。p41[PDFページ42]。
を配慮するように、としている。今回の当ブログ記事が、その一助になれば幸いである。(←いや、不幸のような気もするが)
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