「森友問題」における会計検査院の成果を検査する(2020/11/22)

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《以上広告アナウンスでした。以下本文》

架空小説「仮名手本森友学園」

2020/11/06の衆議院運営委員会で、会計検査院検査官の所信聴取が行われ、「森友学園」をめぐる財務省の文書改ざん問題について言及があったとのニュースがあった。

「森友」再調査せず 会計検査官

時事ドットコムニュース、”同”、2020年11月06日16時06分。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020110600726(参照2020-11-21)

岡村肇会計検査院検査官は、学校法人「森友学園」をめぐる財務省の文書改ざん問題について、

「必要な検査は行ったと考えているので再検査は予定していない」

同上。

と答えたということだ。

森友問題に対する会計検査院による検査(とそれに類するもの)については、当ブログでも、何度か取り上げ、整理した上で考察してきた。

今回は、当ブログでの会計検査院報告に対する過去のまとめと考察を振り返ることで、改めて、この岡村氏の「考えている」という認識が正しいのかどうか、会計検査院が「必要な検査を行った」かどうか、について、「検査」する。

[公開:2020/11/22]

会計検査院による森友問題に関してのこれまでの検査

会計検査院は、国会からの要請に基づき、学校法人森友学園に対する国有地の売却等について、検査・報告しており、その内容は、検査院のホームぺージで確認できる。

国会からの検査要請事項に関する報告(29年11月22日)

会計検査院は、平成29年11月22日、国会法第105条の規定による検査要請を受諾した下記の事項について、会計検査院法第30条の3の規定により、検査の結果を報告しました。

「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」

会計検査院、「ホーム   > 公表資料   > 検査関係   > 検査結果   > 検査結果(平成29年分)   > 国会からの検査要請事項に関する報告(29年11月22日)」、”国会からの検査要請事項に関する報告”、平成29年11月22日。https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/h291122.html
(参照2020-11-21)

そのページから、リンクされている報告書は、以下の通り。

要旨(PDF形式:306KB)
全文(HTML(データベースへ))

「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について(PDF形式:800KB)
※本資料は、会計検査院法第30条の3の規定に基づき検査の結果を報告するものではありません。

同上。(参照2020-11-21)

私が、会計検査院のホームページから確認できたのは、以上のみだ。

会計検査院による森友問題への検査の時系列の整理

初めの報告書(平成29年11月)が会計検査院のホームページにアップされた当時は、新着情報のところに、「森友学園」という語句を含んだタイトルでリンクされていたので、報告書のページまでたどりやすかった。だが、今では新着情報からも消え、トップページからリンクだけでたどるのは、初見ではまず無理だと思われる。

さらに、財務省による改ざん発覚後に改めて平成30年11月に行われた「その後の検査について」は、上記の注釈で示されているように、まるでオマケのような扱いで、ホームページ上でも、平成29年11月22日報告のページに追加で載せているため、「その後の検査について」の位置づけが、時系列も含めてわかりにくいものになっている。

そこで、森友問題における会計検査院の報告(とそれに類するもの)について、関連する内容と共に、改めて時系列を整理する。

森友問題における会計検査院の報告等の時系列

2017/02/09 朝日新聞朝刊「価格非公表、近隣の1割か」
2017/11/22 会計検査院報告「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について《平成29年11月報告》
2018/03/02 朝日新聞朝刊「森友文書、財務省が書き換えか」
2018/06/04 財務省報告書「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」
2018/11/22 会計検査院報告”「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について《その後の検査》
2020/03/17 文春オンライン”「すべて佐川局長の指示です」森友事件で自殺した財務省職員「遺書」入手”
2020/05/14 森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書」

作成:2020/11/22

朝日デジタル、吉村治彦、飯島健太、 ”学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か”、2017年2月9日05時03分。http://www.asahi.com/articles/ASK264H4YK26PPTB00J.html(有料会員記事。参照2020-11-21)

会計検査院、”学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について”、平成29年11月22日報告。http://report.jbaudit.go.jp/org/h29/YOUSEI1/2017-h29-Y1000-0.htm(参照2020-11-21)

朝日新聞デジタル、”森友文書、財務省が書き換えか 「特例」など文言消える”、2018年3月2日 5時20分。https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html(有料会員限定記事、参照2020-11-21)

財務省、”森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書”、平成30年6月4日。https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.pdf(参照2020-11-21)

会計検査院、”「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について”、平成30年11月22日。https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/301206_sonogo_01.pdf(参照2020-11-21)

文春オンライン、「週刊文春」編集部、週刊文春2020年3月26日号、”「すべて佐川局長の指示です」森友事件で自殺した財務省職員「遺書」入手”、2020/03/17。https://bunshun.jp/articles/-/36667(参照2020-11-21)

森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会、”森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書”、2020年5月14日。https://rea-osaka.or.jp/info/documents/1589431927_0.pdf(参照2020-11-21)

注)本来なら、この時系列表の末尾に、

2020/11/09 衆議院調査局「予備的調査の報告書」

も加えるべきだが、現時点(2020/11/21現在)では全文をネット上で確認できず(個人的な検索)、詳細な内容や正式名称も不明のため、今回の時系列表から外した。

時事ドットコムニュース、”元財務局長「内容聞かず」 衆院調査報告が判明―森友改ざん問題”、2020年11月10日07時17分。

同上。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020110901237(参照2020-11-21)

[2020/11/22追記:衆議院調査局による報告書の全文は、2020/11/20付で立憲民主党のホームページで公開されていたことが確認できた。それに伴い、上記の注釈で「確認できず」とした部分に打消し線を入れた。全文を読み込むには時間が掛かりそうなので、当ブログ記事では、衆議院調査局による予備的調査の結果を反映していないことをお断りしておく。]

立憲民主党ホームページ、ニュース、”森友学園問題の文書改ざんに関する調査についての衆院調査局の報告”、2020年11月20日。

森友学園問題の文書改ざんに関する調査についての衆院調査局の報告 – 立憲民主党 (cdp-japan.jp)(参照2020-11-22)

備考)
・過去に当ブログで作成した時系列表を元に、今回、会計検査院報告を中心とした時系列表を再構成した。[参照:当ブログカテゴリーリンク:「森友問題」考察。主に参考にしたのは、”「森友問題」「自殺職員手記」に書かれた「法律相談文書」についての整理(2020/03/18)”、”「森友問題」「不動産鑑定等による調査報告書」の整理とまとめ(2020/05/17)”。]

・会計検査院による二つの報告については、
2017/11/22の報告を「平成29年11月報告
2018/11/22の報告を「その後の検査
と省略して、以下、言及することとする。

時系列を見てわかる通り、会計検査院による報告は、初めにまとめられた「平成29年11月報告」と、財務省改ざん発覚後の2018年11月にまとめられた「その後の検査」、の二つがある。

そして当然のことながら、「平成29年11月報告」では、その後に発覚した財務省の公文書改ざんを見抜けておらず、反映もされていない。また、その改ざん発覚後に、改めてまとめられた「その後の検査」でも、その後に公表された「赤木氏手記」、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書」で提示された疑問点に答えられていないままだ。

会計検査院が「必要な検査を行った」というのは、新事実が明らかになった後では、到底事実とは言い難い。

会計検査院による森友問題への検査での未解決な点

森友問題における会計検査院の二つの報告書で一貫してみられるのは、真実を明らかにすることへの消極的な姿勢だ。その姿勢は、報告書のいたるところで、「十分な根拠が見られなかった」、「食い違いを解消できなかった」などと表現していることからも明白だ。

根拠が不十分ならその根拠を問題視するべきで、食い違いがあるのならどちらが正しいかを検証するのが検査院の役割である。そして、検査院は、その検査をするだけの権限を持っている。それにもかかわらず、会計検査院は、報告書において、「解消できなかった」などと他人事のように、踏み込まずに終わらせている。

これで、会計検査院は「必要な検査を行った」などと言えるものだろうか。

会計検査院による検査での未解決な点は、すでに当ブログでも何度か取り上げてきたが、改めて、具体的な疑問点をあげる。

  • 財務省による虚偽報告(「公租公課」・「法律相談文書」)が明らかになったのにそれを未だに無視
  • その後の検査」において懲戒処分再検討対象者を財務省理財局局長と近畿財務局職員のみを対象とし、実質的な改ざん指示に関わった課長クラスの本省理財局職員を完全に無視
  • 不動産鑑定士の「価格等調査ガイドライン」で正常賃料の記載が例外なく許されなくなったことが記載されていることを無視

財務省による「公租公課」についての虚偽報告

「公租公課」については、当ブログ記事”「森友問題」会計検査院報告「その後の検査について」(2018/11/22)から抜け落ちた「公租公課」について”で取り上げた。

「公租公課」については、「平成29年11月報告」で、財務省本省は「把握できなかった」としている。ところが、改ざん発覚後に、財務省本省が「検査院等から根拠等を問われることも想定し」この件の考え方を整理したメモを作成していたことが追加で公表された。財務省は「公租公課」について本省で検討・整理していたのにもかかわらず、「把握できなかった」と検査院に答えていたことになる。つまり、会計検査院は、財務省に虚偽の報告をされていた。

しかし、そのことが明らかになったにもかかわらず、会計検査院は、この件を「その後の検査」では取り上げていない。

財務省による「法律相談文書」についての虚偽報告

「法律相談文書」については、当ブログ記事”「森友問題」「自殺職員手記」に書かれた「法律相談文書」についての整理(2020/03/18)”で取り上げた。

「法律相談文書」については、会計検査院は「その後の検査」において、「故意又は重大な過失があったとは認められない」と結論付けている。しかし、その後に公表された「赤木氏手記」によれば、財務省本省から近畿財務局に、会計検査院へは「ない」と報告するように指示されたことが明らかになっている。

財務省が「法律相談文書」を「故意に」隠していたという当事者の証言であり、「故意」を認められないと結論付けた会計検査院の報告と明確に食い違う。近畿財務局だけでなく、本省理財局の「法律相談文書」の存否も含めて、会計検査院は、当然、再検査するべきだ。

懲戒処分再検討対象者から課長クラスの本省理財局職員を外したことの疑問

その後の検査」における懲戒処分再検討対象者については、当ブログ記事”「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(後半)―内容の考察”で取り上げた。

その後の検査」では、改ざんの発覚を受けて懲戒処分の再検討をすることになったが、その対象者を「理財局では理財局長が、近畿財務局では管財部長、管財部次長及び統括国有財産管理官」に絞った上で、理財局長については「既に退職している」、近畿財務局の職員に対しては「既に処分を受けている」、「そもそも理財局からの指示」などの理由で、「懲戒処分の要求は行わない」と結論付けている。

ところが、この対象者には、財務省の改ざん報告書で「中核的役割を果たした」と言及されている本省理財局の課長クラスの職員が、初めから含まれていない。この課長クラスの職員たちは、上記の対象者が懲戒処分を免れた理由である「既に退職している」、「そもそも理財局からの指示」といった内容に当てはまらないため、あらためて、懲戒処分の再検討をした上で、その理由を述べなければ、「十分な検査をした」等とは、到底、言えないだろう。

大阪府不動産鑑定士協会が依頼した調査報告書で指摘された問題点

大阪府不動産鑑定士協会が設置した「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会」による調査報告書については、当ブログ記事”「森友問題」「不動産鑑定等による調査報告書」の整理とまとめ(2020/05/17)”で取り上げた。

この調査報告書では、森友問題における不動産鑑定等の信頼性が問題視されたことから、調査・検討をし、課題を提言して今後に活かすとともに、信頼性の維持・向上を目指すものとしている。士業としての問題意識、責任感に基づくものであり、敬意を表したい。

調査報告書自体は、法的責任などを問うものではなく、強制力を持つものではないため、会計検査院の検査について直接言及するものではない。ただ、報告書では、会計検査院の報告について、

X価格調査報告書には価格等調査ガイドラインに抵触すると考えられる記載が複数あるところ、会計検査院が事後的に行った検証においてさえも、価格等調査ガイドラインについて触れられていない。

森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会、”森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書”、p14(PDFページ21)、2020年5月14日。https://rea-osaka.or.jp/info/documents/1589431927_0.pdf(参照2020-11-20)

と指摘している。会計検査院の検証で抜け落ちた点があることを示すものだ。会計検査院は、不動産鑑定の専門家によるこの指摘に、答えるべきだ。

「会計検査院の検査は不十分」という検査結果

以上、会計検査院による森友問題への検査での、明白な誤りについて、個別・具体的にまとめて整理した。

今回は、会計検査院報告での明白な誤りについてまとめたが、さらに「疑い」まで含めると、これ以外にもまだまだたくさんある。

当ブログ記事”「森友問題」会計検査院報告の「その後の検査について」(2018/11/22)のまとめと考察(後半)―内容の考察”で示したように、

  • 「平成27年9月4日打合せ」、「見積もり増額依頼」で見られた職員間の証言の食い違いの追及の不徹底さ
  • 「財務省職員による航空局文書差し替え作業」の分かりにくい表現
  • 財務省本省の関与に言及しながら責任を追及しない不自然さ

などだ。

さらにこれ以外にも、共産党が入手した文書から、報告書を公表前に会計検査院が検査対象である財務省と国土交通省とすり合わせをしていたとみられることが明らかになっており、会計検査院自身が疑惑の当事者でもある。[当ブログ記事”「森友問題」2018/06/05共産党公開文書の時系列整理”ほか参照]。

もちろん森友問題では数多くの疑問点が存在しており、以上で指摘した点以外の問題も様々に存在し、会計検査院の検査に関わらず、解明することが求められる。

しかしだからと言って、会計検査院がその責務を果たさなくていいはずがない。

会計検査院は、検査をする側の立場だが、その検査ぶりによって、国民から検査される立場でもある。

森友問題における会計検査院の検査は、不十分

これが、当ブログでの検査結果である。


過去の考察のカテゴリーはこちら→「森友問題」考察


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